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食品の変質と衛生管理

特に見てほしい方

☑︎食品関係で仕事をしている方

☑︎健康管理に興味がある方

☑︎食生活アドバイザー検定を受ける方

 

 

はじめに

 みなさんは冷蔵庫に食材を置いたままにして、その食材が変な色になっていた経験ありませんか?僕は調味料の期限が切れており、色が濁っていたことがありました。

 食品の変質にも有害なものと無害なものがあります。今回は食品の変質と衛生管理を解説していきます。

 

食品の変質

食品の変質に関する現象

 食品中の成分が時間の経過とともに変化して、色や香り、味などが失われ、食用に適さなくなることを食品の変質といいます。変質の原因には、化学作用や物理作用、微生物(カビ、酵母、細菌など)の繁殖などが挙げられます。

 食品の変質に含まれる概念のうち、重要なものを整理しましょう。

 

腐敗

 食品の成分であるたんぱく質や糖質といった有機物質が、微生物の作用によって分解され、悪臭や有害な物質を生じて食用に適さなくなった状態を腐敗といいます。

なお、微生物が食品の成分を分解して起こる現象のうち、人間に有害な場合は腐敗といいますが、逆に、有益な化合物へと変化した場合は発酵と呼びます。微生物を利用した発酵食品については既に学習しました。結局、発酵と腐敗は人間の価値基準によって分けられたものなのです。

 

変敗

 食品中の炭水化物や脂肪が繁殖した微生物の作用によって酵素が分解され、劣化する現象を変敗といいます。腐敗までいかないが、色や味が変わって食用に適さなくなった状態です。

 

酸敗

 変敗のうち、熱や光の作用によって空気中の酸素と反応して酸化あるいは分解されることを酸敗といいます。例えば、食用油を繰り返し使用すると、色調の変化や刺激臭などが生じ、食用に適さなくなります。

 

褐変

 りんごの皮をむいたまま放置しておくと、リンゴなどに含まれるポリフェノールが空気中の酸素に触れ、表面が褐色に変化します。このような現象を褐変といいます。品質は低下しますが、有害物質は生じていません。

 

食中毒と腐敗の違い

 細菌性食中毒及びウイルス性食中毒と腐敗は、どちらも微生物の働きによって生じますが、腐敗の場合、変な匂いや酸っぱい味がすることで腐敗したことが分かります。ところが、食中毒の場合は微生物が増殖したり毒素を産出したりしていても、臭いや外見、味などは普通と変わらないことがよくあります。

 たとえ食品が腐敗していなくても食中毒は発生するため、注意しなければなりません。

 

有害微生物と有益微生物

食品に様々な変化を起こす微生物には、病気を引き起こす有害微生物と、生物が生きていくために必要で、直接または間接的に働く微生物があります。

 

有害微生物

 食品を腐敗させるなどによって、病気や食中毒を引き起こす細菌が代表的です。発がん性を持つものもあります。

 

消化器系の病気を引き起こすもの

赤痢菌、腸チフス菌、パラチフス菌、コレラ菌など

⇒人から人へ感染することがある。

 

食中毒を引き起こすもの

大腸菌、プロテウス菌セラチア菌など

 

発がん性を持つもの

アフラトキシン

⇒青カビ、毛カビ、クモノスかび等が産生する、発がん性を持つカビ毒。糸状菌に分類される。ピーナッツなどの豆類やアーモンド、ピスタチオ、香辛料などに繁殖して蓄積される。

 

有益な微生物

 食品を製造、加工、保存する際に有益に働きます。カビ、酵母、細菌があります。

 

カビ

自然界に分布し、胞子は空気中に浮遊している。

⇒コウジかび、青かび、毛かび

 

酵母

窒素や無機質を含んだ微酸性の糖液の中で発育。

ビール酵母、ぶどう酒酵母、パン酵母

 

細菌

⇒納豆菌、酢酸菌、乳酸菌

 

 酸素があると生育するもの、あると生育しないものがあります。また、酸素の有無に関係なく、生育するものもあります。

 

HACCP(ハサップ)

 HACCP(ハサップ)とは

 アメリカのNASA(アメリカ航空宇宙局)が開発したHACCP(ハサップ)は製造・加工過程における日常的自主的な予防措置に重点を置いた食品衛生管理システムです。高度な安全性を要求される宇宙食開発の中から考え出された工程管理手法に加えて、その記録を重視するという考えが、現在のHACCP(ハサップ)システムの基本となっています。

 HACCP(ハサップ)は日本語では「危険分析重要管理点」と訳され、この手法を取り入れた総合衛生管理製造過程によって食品を製造加工しようとする者に対し承認を与える制度が食品衛生法で定められています。日本では大規模事業者の8割以上が導入しているものの、中小零細事業者にはまだ普及していないのが現状です。

 食品の製造加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染などの危険分析(Hazard Analysis)を予め行い、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を売ることが出来るかという重要管理点(Critical Control Point)を定めておき、これを継続的に監視(モニタリング)・記録することによって製品の安全性確保を図ります。

 

HACCP(ハサップ)の7原則

  • 危険分析(HA)の実施
  • 重要管理点(CCP)の設定
  • 各CCPにおける管理基準の設定
  • 管理基準に対する監視・測定(モニタリング)方法の設定
  • 管理基準から逸脱した場合の修正措置の設定
  • 検証方法の設定
  • すべての記録の文書化と保管規定の設定

 

 HACCP(ハサップ)を導入することによって、これまで各現場それぞれで経験に従って行ってきたことに、科学的な裏付けができます。

 

家庭に取り入れられるHACCP(ハサップ)の考え方

 HACCP(ハサップ)の考え方は、消費者が各家庭で行う食品衛生管理にも取り入れることができます。

 

購入

食に適しているかどうかをチェックする。生鮮食品は鮮度を加工、食品は賞味期限を確認する。

 

保管

保管場所や温度などをチェックする。床に直接置かない、その食品に適した温度で保存する。

 

調理

調理環境や食品の取り扱いをチェックする。調理器具や食品、調理する人の手指の洗浄などを行う。

 

食べるとき

調理とのタイミングをチェックする調理したものはできるだけ速やかに食べる。室温で長く放置しない。

 

片付け

使った料理器具や食器などが放置されていないかチェックする。ごみの処理も適切に行う。

 

保存

食べ残した料理の取り扱いをチェックする。清潔な食器で保存する。残った料理を再加熱するときは、十分に加熱する。

 

おわりに

 変質にはさまざまな種類があり、それを料理に活かしたものもあります。人間の価値基準でそれらははかられています。また、HACCP(ハサップ)は食品製造におけることでしたが、一般家庭にも置き換えて考えることができるので、身近にある内容になったかと思います。ぜひ、日常生活に取り入れてみてください。