食の安全
特に見てほしい方
☑︎食品関係で仕事をしている方
☑︎健康管理に興味がある方
☑︎食生活アドバイザー検定を受ける方
はじめに
みなさん、遺伝子組み換え技術について、一度は考えた経験があると思います。遺伝子組み換えは良い面と不安な面があり、それは食品も同じです。
今回は今後非常に重要になっていくテーマである遺伝子組み換えを含んだ食の安全を解説していきます。
遺伝子組み換え食品
遺伝子の組み換え
生物の細胞から役に立つ性質を持った遺伝子を取り出し、植物など他の生物の遺伝子に組み込むことにより、新しい性質を持たせることを遺伝子組み換えといいます。例えば、除草剤成分を分解できる細菌からその性質を発現する遺伝子を取り出し、これを植物に組み込むことで、除草剤に強い作物を作り出すことができます。
遺伝子組み換え技術は、このように農作物を除草剤に対して枯れにくくしたり、害虫に食われにくくしたり、日持ちを良くしたりするなどの目的で開発されました。それ以前にも交配(掛け合わせ)の手法による品種改良が行われてきましたが、遺伝子組み換え技術では、組み込む遺伝子が種を超えて色々な生物から得られる、生産者・消費者の求める性質を効率よく持たせることができるなどの点ですぐれています。また低温や乾燥といった不良環境でも生育できる農作物が開発されれば、食糧問題の解決にも貢献できます。
遺伝子組み換えに対する懸念
一方で、安全性や環境への悪影響などを懸念する声も根強くあります。
問題視されている点
- 組み替えられた遺伝子が、周辺の農作物等にも移行してしまわないか
- 遺伝子組み換えの種子が雑草と交配し、昆虫などが減少して生態系に支障をきたさないか
- 害虫抵抗性のものは、標的とした害虫以外の生物にまで危険を及ぼすのではないか
- 微生物に移行すると、突然変異などによって新たな微生物が生まれるのではないか
- 特定の企業による農業支配につながらないか
食品としての安全性の確保
遺伝子組み換え食品は、安全性の確認されたものだけが製造・輸入・販売等を許される仕組みとなっており、安全性が確認された遺伝子組み換え農産物とその加工食品については食品表示基準に基づいて表示が義務付けられています。
安全性が確認された主な遺伝子組み換え食品
- ジャガイモ(害虫抵抗性、ウィルス抵抗性)
- 大豆(除草剤耐性、高オレイン酸形質)
- とうもろこし(害虫抵抗性、除草剤耐性)
- なたね(除草剤耐性)など
ただし、栽培が承認されている品種はあるものの、消費者の強い抵抗もあり、国内で商業栽培は行われていません。また、トリプトファンと呼ばれるアミノ酸の含有量を増やした飼育用イネを開発するなどの動きはありますが、研究の段階にとどまっています。
食品添加物
食品添加物とは、食品の製造過程において、又は食品の加工や保存の目的で、食品に添加・混和・浸潤その他の方法によって使用するものをいいます。
食品衛生法上、原則として安全と有効性を認識して厚生労働大臣が指定する指定添加物だけを使うことができます。その他、使えるのは、長年使用されてきた天然添加物として品目が決められている既存添加物、天然香料、一般飲料物添加物だけです。今後新たに使われる食品添加物は天然物でも化学的合成品でも、すべて指定添加物として指定を受けます。使用目的別に食品添加物を分類しましょう。
食品添加物の使用目的別分類
食品の製造・加工のために必要なもの
豆腐を固めるための凝固剤など
食品の保存性を高めるもの
カビや細菌の増殖を抑え食中毒を防ぐ保存料、酸化を防ぎ長く保存できるようにする酸化防止剤など
食品の風味・外観を良くするもの
味を良くする調味料・甘味料・香りをつける香料・色をつける着色料・食感を良くする乳化剤など
食品の栄養成分を強化するもの
アミノ酸、ビタミン、ミネラルを強化する栄養強化剤など
原材料の製造・加工で使用された添加物が最終食品まで微量となって持ち越され、添加物としての効果を示さない場合をキャリーオーバーといいます。キャリーオーバーは添加物の表示を免除されます。
食品添加物には、生涯、毎日摂り続けても健康に問題がなく、安全とされる摂取量が示されています。これをADIといい、1日あたりの平均値を体重1kgあたりで割って求めます。
感染症
BSE
BSE(牛海綿状脳症)とは、牛の脳組織がスポンジ状になり、起立不能等の症状を示す中枢神経系の病気です。プリオンという通常の細胞たんぱく質の異常化したものが原因と考えられています。日本では、国産牛に肉骨粉を与えないことや、異常プリオンが蓄積しやすい特定危険部位は、と畜処理の工程で除去・焼却することが義務付けられています。特定危険部位とは脳、脊髄・脊柱、眼球、扁桃、回腸の5箇所です。危険部位が使用された可能性があった場合に感染が疑われる食品として、牛エキス、牛ブイヨン、牛脂、ゼラチンなどが挙げられます。
と畜場では48ヶ月を超えた牛にBSE検査を行っています。
また、牛トレーサビリティー法によって、国内で生まれたすべての牛と輸入牛に、10桁の個体識別番号の印字された耳標の装着が義務化されました。これにより、消費者に供給するまでの生産流通履歴情報の把握(トレーサビリティー)が可能となっています。
新型インフルエンザ
これまで人間には感染しないとされていた感染症が、人間に感染したという例も報告されています。
その例として、高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)およびA(H5A6)が挙げられます。
鳥インフルエンザがヒトからヒトへと感染する可能性もあり、感染発症が起きた場合は、死亡率が高くなるとされています。
また、豚インフルエンザA(H1N1)は、すでに2009年に人から人に感染して世界的に流行しました。その際には多くの感染者や死亡者が報告されています。
おわりに
非常に重要なテーマを学んでいきました。しっかりと遺伝子組み換えの役立つ点と問題視される点を理解することで、今後の食の安全における考え方のお役に立ててください。