【10分で納得】抵当権
特に見てほしい方
☑︎宅建士試験を受験したい方
☑︎不動産関係の仕事をしている方
☑︎不動産に興味がある方
はじめに
今回は抵当権を解説していきます。
抵当権の基本
抵当権
抵当権とは、土地や建物を債務の担保とし、債務弁済されない場合に、その土地や建物を競売にかけ、競落代金から債権者が優先して弁済を受ける権利(担保物権)をいいます。
ポイント
- 抵当権は、債務者の不動産のほか、物上保証人の不動産に設定することもできます。
- 抵当権は、不動産のほか、地上権や栄小作権にも設定することができます。
- 抵当権を第三者に対抗するには、登記が必要です。
抵当権に関する用語
被担保債権
抵当権で担保されている権利。
抵当権者
抵当権を持っている人。
抵当権設定者
自分の不動産に抵当権を設定した人。
抵当権の性質
付従性
- 抵当権は被担保債権が存在して初めて成立します。
- 被担保債権が消滅すれば、それに従って抵当権も消滅します。
随伴性
抵当権は被担保債権が移転すると、それに伴って移転します。
不可分性
抵当権は、被担保債権の全部が消滅するまで、抵当不動産の全部について効力を及ぼします。
物上代位性
抵当権は、抵当不動産が売却されたり、滅失等してしまった場合に、抵当不動産の所有者(抵当権設定者)が受け取るべき金銭等について行使することができます。
ポイント
- 抵当権者が物上代位するには、抵当権設定者がその保険金等を受領する前に差押えしなければなりません。
抵当権の効力
抵当権の効力が及ぶ範囲
抵当権の効力が及ぶもの |
備考 |
土地・建物 |
l 土地に設定した抵当権の効力は建物には及びません。 l 建物に設定した抵当権の効力は土地には及びません。 |
付加一体物 |
不動産に付加して一体となったもの。 例)立木、雨戸、ドアなど |
(抵当権設定当時からある) 従物・従たる権利 |
従物 主に付属しているが、独立性があり、独立して権利の対象となるもの。 例)畳、クーラーなど
従たる権利 主物に附属した権利。 例)借地上の建物の借地権
l 抵当権設定後の従物・従たる権利には抵当権の効力は及びません。 |
抵当不動産の果実 |
被担保債権に不履行があった場合には、不履行後に生じた抵当不動産の果実にも抵当権の効力が及びます。 |
抵当権の順位
抵当権の順位
一つの不動産に対して複数の抵当権を設定することができます。この場合の抵当権の順位は、登記の前後によって決まります。
抵当権の順位の変更
複数の抵当権者がいる場合、各抵当権者の合意によって、抵当権の順位を変更することが出来ます。その際、利害関係を有する人がいる時には、その利害関係者の承諾が必要です。なお、抵当権の順位の変更は、登記しなければ効力を生じません。
優先弁済を受けられる額
抵当権者は、元本のほか利息についても優先弁済を受けられます。ただし、後順位の抵当権者がいる場合には、利息について最後の2年分だけとなります。
抵当不動産の第三取得者がいる場合
抵当不動産の第三取得者
抵当不動産の第三取得者とは抵当権の付いた不動産を取得した人のことをいいます。
第三取得者が抵当権を消滅させる方法
抵当権が実行されてしまうと、せっかく不動産を取得しても他人(買受人)の所有物となってしまいます。これを防ぐため、第三取得者は、以下の方法によって、抵当権を消滅させることができます。
弁済
第三取得者が、債務者の借金を全額弁済すれば、抵当権は消滅します。
ポイント
- 債務者の意思に関係なく、第三取得者は弁済することができます。
代価弁済
第三取得者が、抵当権者の請求に応じて、抵当権者に代価を支払えば、抵当権は消滅します。
ポイント
- 債務者の同意・承諾は不要です。
抵当権消滅請求
第三取得者が抵当権者に対して、「一定の金額を支払う代わりに抵当権を消滅して」と請求し、抵当権者がそれを承諾した場合は、抵当権は消滅します。
請求できる期限
抵当権実行としての競売による差押えの効力発生前に請求しなければなりません。
抵当権者が承諾したくないとき
抵当権者は、抵当権消滅請求を承諾しないときは、第三取得者から請求を受けた後2ヶ月以内に、抵当権を実行して、競売の申し立てをすれば、抵当権消滅請求の効果は生じません。
ポイント
- 債務者の同意・承諾は不要。
- 登記をした各債権者に対し、必要事項を記載し、書面を送付する必要があります。
- 債務者や保証人は抵当権消滅請求をすることができません。
法定地上権
法定地上権
例えば、土地と建物を所有するBがAからお金を借り、担保として土地にAの抵当権を設定したとしましょう。その後、抵当権が設定され、Cが土地を競落し、土地の所有者となったとします。そうすると、当初は「土地の所有者=建物の所有者=B」であったものが、「土地の所有者=C、建物の所有者=B」となります。このような場合、自動的にBに地上権(その土地を使える権利)を与えて、Bがその土地を使えるようにしています。これを法定地上権といいます。
法定地上権の成立要件
- 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること。
- 抵当権設定当時、土地の所有者と建物の所有者が同一であること。
- 土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されていること。
- 抵当権の実行(競売)により、土地の所有者と建物の所有者が別々になること。
一括競売
例えば、Bの土地(更地)にAの抵当権を設定した後、Bが建物を建てたとしましょう。そして、抵当権が実行され、Cが土地を競落し、土地の所有者となったとします。この場合、法定地上権の成立要件を満たせていない(抵当権設定当時に建物はまだないので、法定地上権の成立要件を満たさない)ので、Bの法定地上権は成立しません。そうすると、Bはせっかく建てた建物を取り壊さなればなりません。そこで、このような場合には、抵当権者は土地と建物を一括して競売にかけることができます。ただし、抵当権者が優先弁済を受けられるのは、土地の対価についてのみです。
ポイント
- 抵当権設定当時、更地であり、抵当権設定後にその土地に建物を築造している場合に、一括競売が認められます。
- 抵当権者が優先弁済を受けられるのは、土地の対価についてのみです。
賃借権との関係
抵当権設定登記後の賃借権
抵当権設定登記後に設定された賃借権については、原則として、抵当権者及び競売人による買受人に対抗することができません。
抵当権設定登記前の賃借権
対抗要件を備えていれば、賃借人は賃貸借を抵当権者等に対抗することができます。
抵当権設定登記後の賃借権
原則
対抗要件を備えていたとしても、賃借人は賃借件を抵当権者等に対抗できません。
例外
すべての抵当権者が同意し、その同意の登記がある場合には賃借権を対抗できます。
ここでいう対抗要件
土地の賃貸借の場合
土地賃借権の登記または借地上に事自己を所有者として登記した建物の所有。
建物の賃貸借の場合
建物賃借権の登記又は建物の引渡し。
建物の賃借人の保護
前記のように、抵当権設定登記後の賃借権は原則として、抵当権者等に対抗することができません。そのため、抵当権が設定された建物を借りていた人(建物の賃借人)は、抵当権が実行されると、買受人に建物を明け渡さなければなりません(抵当権者等に賃借権を対抗できない場合)。しかし、「直ちに出ていけ」というのは賃借人にとって、あまりにも酷なため、一定の場合には、買受人が建物を買い受けた時から6ヶ月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡さなくてもよいことになっています。
おわりに
抵当権は宅建試験で狙われるところです。簡単に理解することはできないと思いますが、やはり、具体例を書き出しながら、読み進めると理解しやすいです。