【10分で納得】借地借家法(借家)
特に見てほしい方
☑︎宅建士試験を受験したい方
☑︎不動産関係の仕事をしている方
☑︎不動産に興味がある方
はじめに
今回は借地借家法(借家)を解説していきます。
借地借家法(借家)の適用範囲
建物の賃貸借に関しては、借地借家法が適用されます。ただし、一時使用のために建物を賃貸借した場合には、借地借家法は適用されません。
借家契約の存続期間
民法上の賃貸借の存続期間は最長20年でしたが、借地借家法における借家契約の存続期間には制限がありません。なお、期間を1年未満とする建物の賃貸借においては、期間の定めのない賃貸借とみなされます。
契約の更新と解約
期間の定めがある場合
期間の定めがある場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、相手方に対し、「更新をしない」旨の通知をしなかった時には、従前の契約と同一の条件(ただし、期間については定めがないものとなる)で契約を更新したものとみなされます。
なお、賃貸人から上記の通知をする場合には、正当事由が必要です。また、賃貸人が正当事由をもって「更新をしない」旨の通知をした場合でも、期間が満了した後に賃借人がその建物の使用を継続しているときは、賃貸人が遅滞なく異議を述べないと、従前の契約と同一条件(ただし、期間については定めのないものとなる)で契約を更新したものとみなされます。
期間の定めがない場合
期間の定めがない場合は、解約の申入れをすると契約が終了します。
賃借人から解約の申入れる場合には、正当事由は不要で、解約の申入日から3ヶ月経過後に賃貸借が終了します。
一方、賃貸人から解約を申し入れる場合には正当事由が必要で、解約の申入日から6ヶ月経過後に賃貸借が終了します。
造作買収請求権
借地借家法では、建物の賃貸人の同意を得て取り付けた造作(畳やエアコン等)がある場合、賃借人は契約の終了時に賃貸人に対して、造作を時価で買い取ることを請求できます。ただし、造作買取請求権を認めない旨の特約は有効に定めることができます。
建物賃借権(借家権)の対抗力
民法上、建物の賃借人が、第三者に建物賃借権(借家権)を対抗するためには、建物賃借権の登記が必要ですが、借地借家法では、建物賃借権の登記がない場合でも、建物の引渡しがあった場合には、建物賃借権を第三者に対抗することができるとしています。
民法上
建物賃借権を第三者に対抗するためには、建物賃借権の登記が必要
借地借家法
建物賃借権の登記がない場合でも、建物の引き渡しがあれば、建物賃借権を第三者に対抗できます。
家賃の増減額請求権
借家の家賃(借賃)が、近隣の建物の家賃と比較して不相当となった場合等は、当事者(賃貸人、賃借人のいずれも)は、将来に向かって家賃の増額又は減額を請求することができます。なお、一定期間、家賃を増額しない旨の特約がある場合には、その期間内については増額請求をすることができません。
家賃の増額減額について協議が調わないとき
増額について協議が調わないとき
- 賃借人は増額の裁判が確定するまで、自己が相当と認める家賃を支払えばよいです。
- 増額の裁判が確定した場合は、支払済みの金額に不足があれば、不足額に年1割の支払期後利息を付して支払います。
減額について協議が調わないとき
- 賃貸人は減額の裁判が確定するまで、事故が相当と定める家賃の支払いを請求できます。
- 減額の裁判が確定した場合は、受取済みの金額に超過があれば超過額に年1割の受領時からの利息を付して返還します。
建物賃借権の譲渡・借家の転貸
建物賃借権の譲渡・借家の転貸をする場合
建物の賃借人が建物の賃借権を譲渡したり、借家を転貸する場合には、賃貸人の承諾が必要です(民法の規定通り)。
賃貸人の承諾がなく、建物賃借権の譲渡等が行われた場合には、賃貸人は賃借権契約を解除することができます。
建物の賃貸借が終了した場合の転貸借
建物が転貸借されている場合(賃借人が又貸しした場合)で、建物の賃貸借が終了したときの転貸借関係は次のようになります。
期間の満了又は解約申入れによる終了
賃貸借が、期間満了又は解約申入れによって終了した場合、賃貸人は転借人にその旨を通知しなければ、その終了を転借人に対抗できません。なお、通知した場合、通知がされた日から6ヶ月経過後に転貸借が終了します。
債務不履行による解除
賃貸借が、賃借人(B)の債務不履行(賃料を支払わなかったなど)により解除された場合、転貸借も終了します(賃貸人(A)は転借人(C)に対抗することができます)。この場合、賃貸人は転借人に対して通知等して、賃料を代払い(転借人が代わりに賃料を支払うこと)する機会を与える必要はありません。
合意による解除
賃貸借が、賃貸人(A)と賃借人(B)の合意によって解除された場合でも、転貸借は終了しません(賃貸人(A)は転借人(C)に対抗することができません)。
借地上の建物の賃借人の保護
例えば、借地権設定者(地主)がA、借地権者がBで、Bが借地上に建物を建てた後、その建物をCに賃貸したとします。
この場合において、借地権の存続期間(AB間の契約)が終了すると、Cは建物を明け渡さなければなりません。しかし、Cがそのこと(借地権の期間の満了)を知らなかった場合に、Cに対して「期間が満了したから直ちに出て行け」というのはCにとって酷です。
そこで、借地借家法では、以下の規定を設けて、借地上の建物の賃借人を保護しています。
借地上の建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することを、その1年前までに知らなかったときは、裁判所は、建物の賃借人の請求により、当該建物の賃借人がそのことを知った日から1年を超えない範囲において、土地の明渡しに相当の期限を許与することができます。
定期建物賃借(定期借家権)等
これまで一般的な借家権(普通借家権)について見てきましたが、ここでは特殊な借家権について見ていきます。
定期建物賃貸借(定期借家権)
期間の定めがある建物の賃貸借を行う場合、書面によって契約をする時に限って、契約の更新がないこととすることができます。
ポイント
- 建物の賃貸人は、定期建物賃貸借の契約締結前に、賃借人に対して、「契約の更新がなく、期間満了で終了する」旨を記載した書面を交付し、説明しなければなりません。
- 期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に賃借人に対して、期間満了による賃貸借の終了の通知しなければなりません。
- 床面積が200㎡未満の居住用建物の賃貸借においては、転勤等やむを得ない事情により、賃借人が建物を自己生活の本拠として使用することが困難となった場合には、賃借人は解約の申入れをすることができます。この場合、解約の申入れ日から1ヶ月経過後に賃貸借が終了します。
- 家賃の改定に関する特約がある場合、家賃の増減額請求権の規定は適用しません。
取り壊し予定建物の賃貸借
法令や契約によって、一定期間後に建物を取り壊すことが明らかな場合に、その建物の賃貸借をするときは、建物の取り壊し時に賃貸借が終了する旨の特約を定めることができます。この特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によって行う必要があります。
|
民法の賃貸借 |
借地借家法(借地) |
借地借家法(借家) |
存続期間 |
【期間の定めがある場合】 最長20年 【期間の定めがない場合】 解約申入れから、土地は1年、建物は3ヶ月経過後に終了 |
【当初の存続期間】 30年以上 【最初の更新】 20年以上 【2回目以降の更新】 10年以上 |
【期間の定めがある場合】 l 制限なし l 1年未満は期間の定めのない契約とみなす 【期間の定めがない場合】 l 賃貸人からの解約申入れ 正当事由必要 6ヶ月経過後に終了 l 賃借人から解約申入れ 正当事由不要 3ヶ月経過後に終了 |
終了 |
期間の満了等 |
期間満了時に借地権設定者が正当事由をもって更新を拒絶した場合。 |
期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新拒絶をした場合…★ |
更新 |
① 当事者の合意 ② 期間満了後、賃借人が使用を継続している場合で、賃貸人がこれを知りながら異議を述べなかったときは、同一の条件で更新されたものと推定されます。 |
① 合意更新 ② 請求更新 ③ 法定更新 |
① 上記の通知(★)がない場合は、同一の条件で更新したものとみなします。 ② 上記の通知(★)があった場合でも、賃借人が建物の使用を継続しているときは賃貸人が遅滞なく異議を述べないと更新したものみなします。 |
賃借権の登記 |
① 賃借権の登記 ② 借地上の建物の登記 |
① 賃借権の登記 ② 建物の引渡し |
|
その他 |
① 必要費の規定 ② 有益費の規定 |
① 同左 ② 同左 ③ 一定の場合には建物買取請求権が認められます |
① 同左 ② 同左 ③ 一定の場合には造作買取請求権が認められます |
おわりに
これで借地借家法の借地と借地を見ていきました。民法と借地借家法の比較を載せましたので、それぞれの違いを確認してください。