職場環境のストレス課題はどこから?
特に見て欲しい方
・職場環境のストレスの原因を知りたい方
・今後管理監督者になる方
・メンタルヘルスマネジメントに興味がある方
はじめに
近年、職場のストレスの問題に個人のみで対処するのは難しくなってきています。そのため、職場の課題としてストレス対策をしていくことが大事です。皆さんも、何か悩んだとき、すぐには物事は解決できなかった。また、その悩みは悩んだ所であまり意味がないと思った経験がよくあるかと思います。そのため、悩みや不安はすぐにはなかなか解決できません。
今回は職場環境ストレスの原因や課題把握方法を簡単に解説することで、ストレス対策の参考にして頂ければと思います。
職場環境改善が効果的
職場の物理的な環境、労働時間、作業方法、コミュニケーション、組織風土の改善などを通じた広義の職場環境の改善は、労働者の心の健康の保持増進に効果的です。
職場環境改善を主体にストレス対策を行うという考え方は、国際的にも大きな流れとなっています。ILO(国際労働機関)の報告によると、各国事例のうち、半分以上が職場環境改善を通じた対策でした。また、個人向けの対策の効果が一時的・限定的であったのに比べ、職場環境に対しての対策のほうが持続的な効果があったとされています。
職場環境改善は現場の管理監督者と労働者が協力して自主的に、また継続的に取り組める仕組みを作り、産業保健スタッフなどの専門家がそれを支援するという形が理想的です。また、管理監督者は、日常的に職場の環境をよく観察し、部下とよくコミュニケーションを取り、自らの部署の職場環境のよい面と課題を具体的に把握することが重要です。
特に心の健康と関連が深い項目は以下の3つであると考えられています。
この3項目が「仕事のストレス判定図」の項目の参考とされています。
ストレスの原因となる職場環境と具体例
作業内容及び方法
例)
- 仕事の負荷が大き過ぎる、あるいは少な過ぎる
- 長時間労働である、あるいはなかなか休憩が取れない
- 仕事の役割や責任がはっきりしていない
- 従業員の技術や技能が活用されていない
- 繰り返しの多い単純作業ばかりである
- 従業員に自由度や裁量権がほとんど与えられていない
職場組織
例)
- 管理者・同僚からの支援や相互の交流がない
- 職場の意思決定に参加する機会が少ない
- 昇進や将来の技術や知識の獲得について情報がない
職場の物理化学的環境
例)
- 重金属や有機溶剤などへの暴露
- 好ましくない換気、照明、騒音、温熱
- 好ましくない作業レイアウトや人間工学的環境
出典:川上憲人・原谷隆史「職場のストレス第2回 職場性ストレスの健康影響」
職場のストレス要因の評価方法
管理監督者の目だけでは、すべての課題を客観的・網羅的に把握するのは難しいため、質問紙やチェックリストを活用する方法があります。代表的に使われているのが、職場性ストレス簡易調査票です。
職場性ストレス簡易調査票(19指標57項目)
特徴
- ストレス反応・職場におけるストレス要因・修飾要因が同時に評価できる。
- あらゆる職業種で使用できる。
- 57問で構成されている。
仕事のストレス要因(9指標17項目)
- 仕事の負担(量)
- 仕事の負担(質)
- 身体的負担度
- 職場の対人関係でのストレス
- 職場環境によるストレス
- 仕事のコントロール度
- 技能活用度
- 仕事の適性度
- 働きがい
ストレス反応(6指標29項目)
修飾要因(4指標11項目)
- 上司からのサポート
- 同僚からのサポート
- 家族や友人からのサポート
- 仕事や生活の満足度
仕事の負担(量)、仕事のコントロール、上司からのサポート、同僚からのサポート
↓
仕事のストレス判定図への活用(4指標12項目)
仕事のストレス判定図
個々の労働者に回答してもらった職業性ストレス簡易調査票を部署ごとに集計すると、仕事のストレス判定図ができます。これがいわゆる集団分析です。職場ごとのストレスの状況を把握することができます。この仕事のストレス判定図の結果が、職場環境改善活動をどのポイントで実施するかの元資料になります。
仕事ストレス判定図では、まず健康との関係が深いことがわかっている以下の4つの項目を所定のストレス調査票で測定します。そして、その結果に基づいて、職場ストレス要因の程度や健康問題の起きやすさの程度を知ることができます。
仕事ストレス判定図の4つの項目
- 仕事の量的負担
- 仕事のコントロール
- 上司の支援
- 同僚の支援
出典:富士通ソフトウェアテクノロジーズ「e診断@心の健康 「仕事のストレス判定図」の使用マニュアル」
なお、このマニュアルにおいて、高ストレス職場の基準としては、「健康リスクが120を超えている職場ではさまざまなストレス問題が顕在化している場合が多い」とされています。また、個人結果が推測されてしまうリスクを避けるために、できれば20人以上少なくとも10人以上の集団で作成するように推奨されています。
新職業性ストレス簡易調査票
2012年4月に新職業性ストレス簡易調査票も公開されています。
新しくなった点
- 仕事のポジティブな側面も評価して、よい点や強みをさらに伸ばすという視点での質問が追加された
・仕事の意義
・成長の機会
・上司のリーダーシップ
・キャリア形成の機会
・ワーク・エンゲイジメント等
- 42尺度120問で構成されている(短縮版は80問)
まとめ
職場環境ストレスの原因や課題把握方法を見ていきました。職場環境ストレスの原因を知り、「職場性ストレス簡易調査票」や「仕事のストレス判定図」を活用していくことで、課題を把握することができます。そこから、よりよい環境を作り出してください。何より大切なのは、個人だけでなく、職場全体の課題としてストレス対策をしていくことです。