【5分で納得】自ら売主となる場合の8つの制限
特に見てほしい方
☑︎宅建士試験を受験したい方
☑︎不動産関係の仕事をしている方
☑︎不動産に興味がある方
- はじめに
- 自ら売主となる場合の8の制限(8種制限)
- クーリングオフ制度①
- 瑕疵担保責任の特約の制限②
- 損害賠償額の予定等の制限③
- 手付の性質、手付額の制限④
- 手付金等の保全措置⑤
- 自己所有に属さない物件の売買契約の制限⑥
- おわりに
はじめに
宅建業法には宅建業者が自ら売主となって、素人の買主に対して取引をする場合、素人の方を守るルールがあります。今回は、その8種制限を解説していきます。
自ら売主となる場合の8の制限(8種制限)
8種制限
- クーリングオフ制度
- 瑕疵担保責任の特約の制限
- 損害賠償額の予定等の制限
- 手付の性質、手付の額の制限
- 手付金等の保全措置
- 自己所有に属しない物件の売買契約(他人物売買)の制限
- 割賦販売契約の解除等の制限
- 所有権留保等の禁止
なお、この制限は売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の一般人となる場合にのみ適用されます。
クーリングオフ制度①
クーリングオフ制度とは、お客さんが一旦行った契約や申込みをキャンセルことをいいます。
クーリングオフが出来ない場所
ただし、どんな場合にもクーリングオフができるわけではなく、以下の場所で契約を締結したり、申し込みをした場合にはクーリングオフは適用されません。
- 事務所
- 以下の場所で専任の取引士を設置する義務がある場所
事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設を有する場所
一団の宅建建物の分譲を行う、土地に定着する案内所
宅建業者が売主となりほかの宅建業者に媒介又は代理を依頼したときはほかの宅建業者の事務所、事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設を有する場所、一団の宅建建物の分譲を行う、土地に定着する案内所に該当する場所
- 売主が自ら申し出た場所の自宅、勤務先
申込みの場所と契約締結場所が異なる場合
例えば、宅建業者の事務所で買受けの申込みを行い、後日、喫茶店で約束を締結したというように買受けの申込み場所と契約を締結した場所が異なる場合、クーリングオフ制度が適用されるかどうかは申込みの場所で判断します。
申込みの場所 |
契約の場所 |
|
事務所…× |
喫茶店…◯ |
できない |
喫茶店…◯ |
事務所…× |
できる |
◯…クーリングオフできる場所
×…クーリングオフできない場所
クーリングオフができなくなる場所
以下の場合にはたとえ買受けの申込みの場所がクーリングオフできる場所に該当していても、クーリングオフができなくなります。
クーリングオフの方法
クーリングオフは必ず書面で行わなければなりませんまた買主が書面を発した時にクーリングオフの効果が生じます。
クーリングオフの効果
適正にクーリングオフがされた場合嬉しいは既に受け取った手付金や代金をすべて返さなければなりません。また、宅建業者はクーリングオフに伴う賠償金や違約金の支払を請求することはできません。
瑕疵担保責任の特約の制限②
瑕疵担保責任とは、売買の目的物にキズや欠陥があった場合に売主が負う責任をいいます。
民法の規定
民法の規定によると、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、善意無過失の買主は、瑕疵を発見した時から1年以内に限り、売主に対して、損害賠償の請求ができます。また、瑕疵がひどすぎて目的が達成できなかった場合には、契約の解除もできます。なお、民法では、「瑕疵があっても売主は瑕疵担保責任を負わない」等の特約をつけることもできるとしています。
宅建業法の規定
宅建業法では、瑕疵担保責任について民法の規定よりも買主に不利となる特約はしてはいけない、と規定しています。ただし、瑕疵担保責任の追及期間について、特約で引渡し日から2年以上の期間を定めた場合、その特約は有効となります。
損害賠償額の予定等の制限③
民法の制限
事前に損害賠償額の取り決めをしていなかった場合には、損害を被った側の実損額(実際に損をした額)が損害賠償額となります。また、損害賠償額を事前に決めておくこともでき、これを損害賠償額の予定といいます。民法では、損害賠償の予定額には制限がありません。
宅建業法の規定
損害賠償額を予定し、または違約金の定めをする場合
損害賠償額の予定と違約金の合計額は代金の20%まで、それを超える場合は超える部分について無効。
損害賠償額を予定しない、または違約金の定めがない場合
実損額を請求できます。
手付の性質、手付額の制限④
手付の性質の制限
手付とは、売買契約において買主が売主に対してあらかじめ交付する金銭とをいいます。
種類
証約手付 |
契約の成立を証するために交付される手付 |
違約手付 |
契約違反があった場合に募集されるものとして交付される手付 |
解約手付 |
売買契約を解除する時に用いられるものとして交付される手付 買主は売主が履行に着手するまで手付を放棄して契約を解除することができる。 売主は買主が履行に着手するまで手付の倍額を買主に償還して契約を解除することができます。 |
民法の規定
民法では、手付の種類は当事者の合意によって決められます。なお、特段の定めがない場合の手付は、解約手付と推定されます。
宅建業法の規定
宅建業法では、手付がどんな種類であったとしても、解約手付とされます。
手付の額の制限
民法の規定
民法では、手付の額は当事者で自由に決めることができます。
宅建業法の規定
宅建業法では、宅建業者が自ら売主となる売買契約については、手付の額は代金の2/10を超えることができないとしています。なお、2/10をこえる定めをした場合には、その超える部分が無効となります。
手付金等の保全措置⑤
手付金等の保全措置の必要性
手付金は、契約締結後、物件の引渡前に売主に支払われます。不動産売買では物件の代金が大きいので、手付金も何千万円になることがあります。もし、宅建業者が手付金を受け取った後、倒産してしまったら買主は物件は受け取れないわ、何千万万円もの手付金は返してもらえないわ、と散々な目にあってしまいます。そのため、宅建業者は手付金等の保全措置をした後でなければ、手付金等を受け取れないことになっています。
保全措置の内容
|
未完成物件の場合 |
完成物件の場合 |
保全措置の方法 |
l 銀行との保証委託契約 l 保険会社との保証保険契約 |
l 銀行との保証委託契約 l 保険会社との保証保険契約 l 指定保管期間による保全措置 |
例外 |
l 買主への所有権移転登記がされたとき(又は買主が所有権の登記をした時) |
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l 手付金等の額が代金の5%以下かつ1,000万円以下 |
l 手付金等の額が代金の10%以下かつ1,000万円以下 |
ポイント
自己所有に属さない物件の売買契約の制限⑥
民法の規定
民法では、他人の物を売る契約は有効となります。
宅建業法の規定
宅建業者が自ら売主となる場合は、原則として他人物売買は禁止されています。ただし、例外として、他人物売買ができる場合があります。
原則
宅建業者は自ら売主として自己所有に属さない物件の売買契約(売買予定契約を含む)を締結してはいけません。
例外
- 自己の所有に属さない物件であっても、現在の所有者との間で、宅建業者が物件を取得する契約を締結している場合には、売買契約(売買予定契約を含む)を締結できます。
- 宅建業者は自ら売主として未完成物件を売ることはできません。ただし、手付金の保全措置を講じている時、手付金等の保全措置を講じる必要がない時には、未完成物件を売ることができます。
※⑦割賦販売契約の解除等の制限と⑧所有権留保等の禁止については、また後日説明いたします。
おわりに
宅建業者は宅建業の知識のない買主に対して、不利になる売買をしないために、8種制限があります。そこを頭に置いた上でもう一度読んでみてください。