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【5分で納得】時効

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 みなさんは日常で「もう時効だね〜」と使ったことはありますか?きっと、ある一定期間が経過したので、そのものに対する効果がなくなってるというような意味で使っていませんか?時効にもさまざまな種類があります。

 今回は時効を解説していきます。

 

時効

 時効とは、ある状態が一定期間続いた場合に、権利を取得したり(取得時効)、権利が消滅する(消滅時効)といった効果を認めることをいいます。

 

取得時効

 取得時効とは、ある状態が一定期間続いた場合に権利を取得できる制度をいいます。

 

所有権の取得時効が完成するための要件

 下記の期間、所有の意思をもって、平穏かつ公然に他人の物を占有すれば、その所有権を取得することができます。

 

占有の開始時に

  • 善意&無過失であった場合:10年間
  • 善意&有過失であった場合:20年間
  • 悪意であった場合:20年間

 

ポイント

  • 「善意・悪意」、「有過失・無過失」は、所有の開始時で判定します。
  • 実際に自分で占有せず、誰かに占有させていても取得時効は完成します。

 

占有の承継

 売買や相続があった場合、占有は承継されます。なお、前の占有者の占有期間を合計する(承継する)場合には、前の占有者の善意・悪意も承継します。

 

消滅時効

 消滅時効とは、一定期間権利を行使しないと、その権利が消滅する制度をいいます。

 

消滅時効の期間
  • 通常の債権:10
  • 短期消滅時効にかかる債権:1年〜5年
  • 債権又は所有権以外の財産権:20
  • 判決で確定した権利:10

 

ポイント

 

消滅時効の起算点

 消滅時効は権利を行使できる時から進行します。

 

確定期限のある債権

 期限が到来した時

 

不確定期限付債権

 期限が到来した時

 

期限の定めのない債権

 債権が成立した時

 

時効の中断

 時効の中断とは、時効の進行をストップさせ、それまでの期間をゼロにすることをいいます。

 

時効中断事由(主なもの)

  • 請求

訴えの提起(裁判上の請求)

 ただし、訴えが却下された場合や、取り下げられた場合は時効は中断しません。

 

支払の督促

 期間内に仮執行の宣言の申立てをしなかったときは、時効は中断しません。

 

催告

 西国は裁判外での請求なので催告しただけではダメです。催告後、6ヶ月以内に裁判上の請求とをしないと時効は中断しません。

 

  • 差押え、仮差押え、仮処分

 

  • 承認

 

時効の効力・援用・利益の放棄

時効の効力

 時効の効力は、その起算日(時効の期間がスタートする日)に遡って発生します。

 

時効の援用

 援用とは、時効の利益を受ける人が、時効の利益を受ける旨の意思表示をすることをいいます。時効が完成しても、時効によって直接利益を受ける人が援用(主張)しなければ、時効の効力は生じません。

 

ポイント

  • 時効が完成しても、時効によって直接利益を受ける人が援用(主張)しなければ、時効の効果は生じません。

 

時効によって直接利益を受ける人
  • 債務権
  • 保証人、連帯保証人
  • 物上保証人
  • 抵当不動産の第三取得者

 

時効の利益の放棄

 時効の利益は、あらかじめ放棄することはできません。なお、時効の完成後であれば、時効の利益を放棄することができます。

 

おわりに

 時効には、ある状態が一定期間続いた場合に、権利を取得する取得時効、権利が消滅する消滅時効があります。皆さんも「〇〇したら、〇〇するね!」など、日常生活で自然と使っています。時効は難しく考えず、内容を読み進めていってください。

【5分で納得】代理

特に見てほしい方

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はじめに

 みなさんは、忙しくて、誰かに物事を頼んだことありますか?僕は平日が忙しく、過去に郵便局に親に通帳を作りにいってもらったことがあります。恥ずかしい。

 今回は日頃から無意識に行なっている人も多いであろう代理を解説していきます。

 

代理の基本

代理

 代理とは、本人に代わって契約の締結等をすることをいいます。

 

代理行為の効果

 代理人が行った行為の効果は、直接本人に生じます。

 

代理の効果

 代理人が本人に代わって行った行為の効果は、直接本人に生じます。

 

有効な代理行為の要件
  • 代理人代理権を有していること。
  • 代理人が本人の代理であることを相手方に示していること(顕名)。

 

代理人顕名をせずに契約した場合

原則

 代理人自身が契約したものとみなします。

 

例外

 以下の場合には有効な代理行為となります。

  • 相手方が悪意であった場合。
  • 相手方が善意有過失であった場合。

 

代理行為の意思表示に瑕疵があった場合

 代理人が行った意思表示に関して瑕疵(詐欺、脅迫、錯誤、心裡留保など)があった場合、詐欺や脅迫等の有無、善意か悪意かなどは、代理人を基準に判定します。  

 

制限行為能力者代理人になれるか

 未成年等の制限行為能力者であっても本人はこれらの代理人とする事ができます。したがって、本人は代理人制限行為能力者であることを理由に代理人の行為を取り消すことはできません。

 

代理権の消滅

 

任意代理

法定代理

本人

l  死亡

l  破産手続開始の決定

l  死亡

代理

l  死亡

l  破産手続開始の決定

l  後見開始の審判

 

 

自己契約・双方代理の禁止

 自己契約とは、代理人が自ら契約の相手方となって本人と契約することをいいます。また、双方代理とは、同じ人が契約の当事者の代理人となることをいいます。自己契約・双方代理は原則として禁止されています。

 

原則

 自己契約・双方代理は禁止。

 

例外

 以下の場合には自己契約・双方代理OK。

  • 本人の許諾がある場合。
  • 債務の履行をする場合。

 

復代理

復代理

 復代理とは、代理人が自分に与えられた権限の範囲内の行為を行わせるために、さらに代理人を選ぶことをいいます。復代理人を選ぶのは代理人ですが、復代理人の行った行為の効果は本人に帰属します。

 

代理人の選任と代理人の責任

 復代理人は一定の場合に選任することができます。

 

 

任意代理

法定代理

代理人を選任できる場合

本人の承諾がある時。

やむを得ない事由があるとき。

法定代理人は自己の責任において復建代理人を選ぶことができます。

代理人の選任における代理人の責任

原則

 復代理人の選任監督について責任を負います。

 

例外

 本人の氏名によって、復代理人を選任した場合には、その選任・監督について責任を負いません。  

原則

 法定代理人は復代理人のすべての責任を負います。

 

例外

 やむを得ない事由によって復代理人を選任したときは、選任・監督についてだけ責任を負います。

 

代理人の選任と代理人の代理権

 復代理人を選任しても、代理人の代理権は消滅しません。

 

無権代理

無権代理

 無権代理とは、代理権がないのに代理人として行った行為をいいます。また、無権代理行為を行った者を無権代理といいます。

 

無権代理行為の効果

 無限代理人が行った契約の効果は、原則として本人に生じません。ただし、本人が追認した場合には、契約の時にさかのぼって有効な代理行為があったことになります。

 

ポイント

  • 追認は無権代理に対して行ってもよいし、相手方に対して行ってもよいです。

 

無権代理人の相手方の保護

 無権代理人と契約を行った相手方を保護するため、相手方には以下の権利が認められています。

 

催告権

 無権代理人と契約した相手方は、本人に対して、「追認するかどうかを解答して」と催告することができます。  

 

ポイント

  • 解答が無い場合には、追認を拒絶したものとみなします。
  • 催告権は相手方が無権代理行為について善意でも悪意でも認められます。

 

取消権

 無権代理人と契約した善意の相手方は、本人が追認しない間は契約を取り消すことができます。

 

ポイント

  • 本人が追認した後は契約を取り消すことができません。

 

無権代理人に対する責任追及権

 善意無過失の相手方は、無権代理に対して、契約の履行または損害賠償の請求をすることができます。

 

ポイント

 

無権代理と相続

 無権代理行為があった後に、本人または無権代理人が死亡した場合の法律関係は以下の通りです。

 

本人が死亡し、無権代理人が本人を単独で相続した場合

 無限代理行為は有効。

 

無権代理人が死亡し、本人が無権代理人を単独で相続した場合

 本人は追認を拒絶することができます。

 

ポイント

  • ただし追認を拒絶した場合において、相手方が善意無過失の場合には、前述の無権代理人の責任が生じます。

 

表見代理

表見代理

 表見代理とは、無権代理行為であっても、表面上、正当な代理があるように見える場合には有効な代理行為があったものとする制度をいいます。表見代理が成り立つには、相手方は善意無過失でなければなりません。

 

表見代理が成立する場合

以下の①から③のいずれかに該当し、相手方が善意無過失である場合には表見代理が成立し、有効な代理行為となります。

 

  • 「代理権を与えたよ」という表示をした場合

 実際には代理権を与えていないのに、本人が「代理権を与えたよ」という表示をした場合。

 

  • 権限外の代理行為をした場合

 本人から代理権を与えられているが、その代理権の範囲を超えて、代理人が代理行為をした場合。

 

  • 代理権消滅後に代理行為をした場合

 本人が、以前代理権を与えており、その代理権が消滅した後にもかかわらず、代理人として代理行為を行った場合。

 

おわりに

 この代理は不動産業に限らず、あらゆる業界や日常で耳にするワードです。理解をしておいて損はないので、ぜひ読んでおいてください。

【5分で納得】意思表示

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はじめに

 詐欺や強迫、嘘をつくなど、嫌なことをされた経験はありますか?僕は小学生の時に仲間外れにされて、遊ぶ約束で嘘の集合場所を教えられて、集合場所に誰もいなかった経験があります。非常に辛かったです。みなさんは他人を傷つけることはやめてくださいね。する側もされる側も誰もいい思いをしませんので。

今回はそのような嘘をつくなどの意思表示を解説していきます。

 

意思表示

 意思表示とは自分の意思を相手に対して表すことをいいます。契約は、原則として申込み承諾の二つの意思表示が合致して成立します。しかし、騙されて契約しまった場合(詐欺)や、脅されて契約してしまった場合(脅迫)、嘘の意思表示で契約した場合(虚偽表示)などもあります。ここでは、このような場合における契約の有効性についてみていきます。

 

詐欺

 詐欺とは、相手を騙して勘違いさせることをいいます。詐欺によってなされた意思表示は原則として取り消すことができます。

 

原則

 詐欺による意思表示は取り消すことができます。

 

ポイント

  • この取消しは、善意の第三者には対抗することができません。

 

例外

 第三者の詐欺によってなされた意思表示は、相手方が善意の場合には、取り消すことができません。

 

強迫

 強迫とは、相手を脅すことをいいます。脅迫によってなされた意思表示は、取り消すことができます。

 

ポイント

  • この取消しは善意の第三者にも対抗することができます。
  • 三者の脅迫によってなされた意思表示は、相手方が善意の場合でも、悪意の場合でも取り消すことができます。

 

虚偽表示(通謀虚偽表示)

 虚偽表示(通謀虚偽表示)とは、相手方と示し合わせて嘘の意思表示をすることをいいます。虚偽表示による意思表示は、当事者間では無効となります。ただし、その無効を善意の第三者に対抗することはできません。

 

当事者間

 虚偽表示による意思表示は無効。

 

対第三者

 善意の第三者に対しては、その無効を対抗することはできません。

 

ポイント

  • 三者には転得者も含まれます。

 

三者が悪意で転得者が善意の場合

 無効を転得者に対抗できません。

 

三者が善意で転得者が悪意の場合

 無効を転得者に対抗できません。

 

錯誤

 錯誤とは勘違いで意思表示をすることをいいます。

 

要素の錯誤

 錯誤による意思表示の場合、契約の重要な部分に錯誤(要素の錯誤)があるときは無効となります。ただし表意者(意思表示をした人)に重大な過失がある場合には無効を主張することはできません。

 

原則

 要素の錯誤による意思表示は無効

 

例外

 表意者に重大な過失があった場合には表意者は無効を主張できません。

 

ポイント

  • 錯誤の無効を主張できるのは原則として表意者。
  • この無効は、善意の第三者にも対抗できます。

 

動機の錯誤

 要素の錯誤に対して、「動機の錯誤」というものがあります。動機の錯誤とは、意思と表示は一致しているが、意思を形成する過程(動機)に錯誤があることをいいます。例えば、いま売れれば課税されないと思って【動機】、甲土地を売ろうと思い【意思】、「甲土地を売ります」と言って【表示】、甲土地の売買契約を結んだけど、実際には勘違いで課税された、という場合です。この場合には、要素の錯誤とはならないので、原則として、表意者は無効を主張することはできません。ただし、動機が表示されて(「今売れれば課税されないから、甲土地を売りますと言うなどして」)、当事者の意思解釈上、法律行為の内容とされたと認められる場合には、要素の錯誤が成立するとされています。

 

心裡留保

 心裡留保とは、表意者が本心ではないことを自分で知っていて意思表示をすること(冗談を言ったり、嘘をつくこと)をいいます。心裡留保による意思表示は、原則として有効となります。

 

原則

 心理留保による意思表示は有効

 

例外

 以下の場合には無効

  • 相手方が悪意であった場合。
  • 相手方が善意有過失であった場合。

 

おわりに

 意思表示は身近なことを例にして、当てはめていくことで理解できると思います。心裡留保も日頃のことを具体例として、読むと理解度が上がります。

 

 

【5分で納得】制限行為能力者

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 今回から権利関係を説明していきます。権利関係は暗記ではなく、流れと構造の理解が大切になってきます。「なぜ」と何度も問い続けながら、読み進めていってください。

 まずは、制限行為能力者を解説していきます。

 

 

制限行為能力者の種類

制限行為能力者

 制限行為能力者とは判断能力が不十分であるため、単独で、有効な法律行為を行うことができる能力(行為能力)を制限された人をいいます。

 

「人」に関する3つの能力

 権利能力、意思能力、行為能力についてまとめると次の通りです。

 

権利能力

権利・義務の主体となることのできる資格

ポイント

l  人(自然人)であれば、生まれながらにしてすべて権利能力を持つ。

l  胎児でも不法行為による損害賠償請求、相続・遺贈については権利能力を持つ。

意思能力

自分が行った法律行為の結果を理解(認識・判断)することができる能力

ポイント

l  意思能力がない状態で行った法律行為は無効

行為能力

単独で有効な法律行為を行うことができる能力

 

制限行為能力者の種類

 制限行為能力者には、未成年者、成年被後見人被保佐人、被補助人の4種類があります。

 

未成年者

 20歳未満の者。

 ただし、婚姻したものは成年に達したものとみなされる。

 保護者:親権者・未成年後見

 

成年被後見人

 精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者。

 保護者:成年後見

 

被保佐人

 精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所の保佐の審判を受けた者。

 保護者:保佐人

 

被補助人

 精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分であるもので、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者。

 保護者:補助人

 

制限行為能力者の保護

未成年者の保護

 未成年者が単独で法律行為をする時には法定代理人(保護者=親権者が未成年後見人)の同意が必要です。また、法定代理人が未成年者を代理して法律行為をすることもできます。そして、未成年者が法定代理人の同意を得ずに単独で行った行為は、原則として取り消すことができます。

 

原則

 未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った行為は取り消すことができます。

 

ポイント

  • 本人未成年者、法定代理人のいずれも取り消されます。
  • 取消しは第三者(善意・悪意)を問わないに対して対抗できます。

 

例外 下記の行為は取り消せません。

  • 単に権利を売るだけの行為や義務を免れる行為。
  • 法定代理人から処分を許された財産を処分する行為。
  • 法定代理人から営業を許された特定の行為。

 

成年被後見人の保護

 成年被後見人の財産上の行為は、原則として成年後見人(法定代理人)が代理して行います。成年被後見人が、法定代理人の代理によらず行った行為は、原則として取り消すことができます。

 

原則

 成年後見人が法定代理人の代理によらず行った行為は取り消すことができます。

 

ポイント

 

例外 下記の行為は取り消せません。

  • 日用品の購入その他の日常生活に関する行為。

 

被補佐人の保護

 被保佐人が重要な財産上の行為を行うには、保佐人の同意(またはこれに代わる家庭裁判所の許可)が必要です。被保佐人が、保佐人の同意なし(または家庭裁判所の許可なし)に行った重要な財産上の行為は、取り消すことができます。

 

原則

 被保佐人は、保佐人の同意がなくても有効な契約を結べます。

 

例外

 重要な財産上の行為を保佐人の同意なしに行った場合には、取り消すことができます。

 

重要な財産上の行為(例)

  • 借金をしたり、保証人になること。
  • 不動産、その他の重要な財産の売買をすること。
  • 新築、改築、増築、大修繕をすること。
  • 長期賃貸借をすること。 など

 

ポイント

  • 被保佐人が保佐人の同意なしに重要な財産上の行為を行った場合は、本人(被保佐人)、保佐人のいずれも取り消すことができます。
  • 取消しは第三者(善意・悪意)を問わないに対して対抗できます。

 

被補助人の保護

 被補助人が家庭裁判所の裁判で定めた特定の法律行為を行う時には、補助人の同意(またはこれに代わる家庭裁判所の許可)が必要です。補助人が補助人の同意が必要な行為を補助人の同意なし(またはこれに代わる家庭裁判所の許可なし)に行った場合は、その行為を取り消すことができます。  

 

原則

 被補助人は、補助人の同意がなくても有効な契約を結ぶことができます。

 

例外

 重要な財産上の行為のうち、家庭裁判所の審判によって補助人の同意を得なければならないとされた特定の行為を、被補助人が補助人の同意なしに行った場合には、取り消すことができます。

 

ポイント

  • 被補助人が、同意が必要な行為を補助人の同意なしに行った場合は、本人(被補助人)、補助人のいずれも取り消すことができます。
  • 取消しは第三者(善意・悪意を問わない)に対して対抗できます。

 

制限行為能力者の相手方の保護

 制限行為能力者と取引した場合、取引の相手方は、いつ取り消されてしまうかわからない状況におかれてしまいます。そこで、以下のような、制限行為能力者の相手を保護する制度が用意されています。

 

制限行為能力者の詐術

 制限行為能力者が、「自分は行為能力者である」と信じさせるために、詐術を用いた時は取り消すことはできなくなります。

 

催告権

 制限行為能力者と取引をした相手方は、1ヶ月以上の期間を定めて、追認するかどうかを催告することができます。

 

 

誰に催告する?

催告したけど解答がない場合は

未成年者

法定代理人

追認したとみなされます

成年被後見人

法定代理人

追認したとみなされます

被保佐人

保佐人又は本人

保佐人に催告した場合、追認したとみなされます。

本人に催告した場合、取り消したとみなされます。

被補助人

補助人又は本人

補助人に催告した場合、追認したとみなされます。

本人に催告した場合、取り消したとみなされます。

行為時には制限行為能力者であったが、催告時は行為能力者となっている場合

本人

追認したとみなされます。

 

おわりに

 未成年者、成年被後見人被保佐人、被補助人のそれぞれの特徴を比較しながら、押さえましょう。

【5分で納得】住宅瑕疵担保履行法

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 今回は住宅瑕疵担保履行法を解決していきます。

 

住宅瑕疵担保履行法

 品確法(「住宅の品質確保の促進等に関する法律」)によって、新築住宅の売主には10年間の瑕疵担保責任が課されています。しかし、このような法律があったところで、売主に充分な資金力がなければ、瑕疵担保責任が履行されず、住宅の買主の保護が図れなくなります。そこで、品確法による瑕疵担保責任の履行を確保するため、住宅瑕疵担保履行法により、売主(宅建業者)に資力確保義務が課されました。

 

用語の意味

新築住宅

 新たに建築された住宅で、人の住居のように供されたことがないもの(建設工事完了日から年を経過したものを除く)。

 

特定住宅瑕疵担保責任

 品確法の規定による担保責任のこと。

 

資力確保措置が義務付けられている者

 宅建業者が売主となり、宅建業者以外の者(買主)新築住宅を引き渡す場合、資力確保措置が義務付けられます。

 

ポイント

  • 買主が宅建業者の場合には適用なし。
  • 宅建業者が自ら売主となる場合にのみ適用。媒介・代理の場合には適用なし。

 

資力確保措置の方法

 資力確保措置の方法には、保証金の供託(住宅販売瑕疵担保保証金の供託)と保険への加入(住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結)の2つがあります。

 

保証金の供託(住宅販売瑕疵担保保証金の供託)

 宅建業者は、各基準日(毎年3月31日と9月30日)において、基準日前10年間に引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければなりません。

 

ポイント

供託先とは?

 宅建業者の主たる事務所の最寄りの供託所

 

供託する額は?

 基準日前の10年間に引き渡した新築住宅の合計戸数をもとに計算した金額

 

供託するものは?

 金銭のほか、有価証券もOK

国債:額面金額の100%

地方債・政府保証債:額面金額の90%

それ以外の国土交通省令で定める有価証券:額面金額の80%

 

保証金の還付によって補償金が不足することになった場合は?
  • 還付があった旨の通知書の送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません。
  • 供託後2週間以内に免許権者に届け出なければなりません。

 

保険への加入(住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結)

 住宅販売瑕疵担保責任保険契約(住宅瑕疵担保法が定める資力確保措置のための保険契約)と認められるための保険契約の要件は、次のとおりです。

  • 宅建業者(売主)が保険料を支払うものであること。
  • 宅建業者瑕疵担保責任を履行したことによって生じた当該宅建業者の損害を填補するものであること。
  • 宅建業者が相当の期間を経過しても瑕疵担保責任を履行しない場合には、買主宅建業者以外の者の請求により損害填補するものであること。
  • 損害填補するための保険金が2,000万円以上であること。
  • 有効期間が10年以上(買主が新築住宅の引渡しを受けた時から10年以上)であること。

 

資力確保措置の状況に関する届出等

 新築住宅を引き渡した宅建業者基準日ごと(毎年3月31日と9月30日)に免許権者に対して資力確保措置の状況について届出を行わなければなりません。

 

ポイント

届出先は?

 免許権者

 

届出の期限は?

 基準日から3週間以内

 

届出をしなかったら?

 基準日の翌日から50日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない。

 

供託所の所在地等の説明

 新築住宅の売主である宅建業者が保証金(住宅販売瑕疵担保保証金)の供託をしている場合には、売買契約を締結するまでに買主(宅建業者を除く)に対して、供託所の名称や所在地等を書面を交付して説明しなければなりません。

 

おわりに

 住宅販売瑕疵担保責任により、肝心の事業者が倒産してしまっていても、お引き渡しから10年以内に瑕疵が見つかった時に、保険金や保証金で修理費用をカバーしてくれるので、マイホームを考えている方にとっては優しい制度です。

【5分で納得】監督・罰則

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 今回は宅建業者が悪いことをした際の監督処分を解説していきます。

 

宅建業者に対する監督処分 

監督処分の種類

 宅建業者に対する監督処分には処分が軽い順に指示処分、業務停止処分、免許取消処分の3つがあります。

 

指示処分の内容

対象事由

 国土交通大臣又は都道府県知事は宅建業者が、以下の対象事由に該当する場合宅建業者に対して、必要な指示処分をすることができます。

 

指示処分の対象(主な事由)

  • 業務に関し、宅建業法以外の法令に違反し、宅建業者として不当であると認められたとき
  • 取引士が処分を受けた場合において、宅建業者の責めに帰すべき事由があるとき
  • 業務に関し、取引士の関係者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき
  • 宅建業法の規定に違反したとき

 

処分権者

 指示処分は免許賢者のほか、宅建業者が処分の対象となる行為を行った都道府県の知事も行うことができます。

 

業務停止処分の内容

対象事由

 国土交通大臣又は都道府県知事は宅建業者に対して、1年以内の期間を定めてその業務の全部又は一部の停止を命ずることができます。

 

業務停止処分の対象事由

  • 業務に関し、宅建業法以外の法令に違反し、宅建業者として不当であると認められたとき
  • 取引市が処分を受けた場合において、宅建業者の責めに帰すべき事由があるとき
  • 指示処分に違反したとき
  • 宅建業に関し、不正又は著しく不当な行為をしたとき
  • 宅建業法の一定の規定に違反したとき

 

処分権者

 業務停止処分は免許権者のほか、宅建業者が処分の対象となる行為を行った都道府県の知事も行うことができます。

 

免許取消処分の内容

対象事由

 国土交通大臣又は都道府県知事は、宅建業者が以下の必要的取消し事由に該当する場合には、その宅建業者の免許を取り消さなければなりません。

 

免許取消処分の対象事由(主なもの)

必要的取消事由
  • 不正の手段で免許を受けたとき
  • 業務停止処分に該当する行為をし、情状が特に重いとき
  • 業務停止処分に違反したとき
  • 成年被後見人被保佐人破産者で復権を得ないものとなったとき
  • 禁錮以上の刑に処されたとき
  • 宅建業法の規定違反、暴力系の犯罪、背任罪により罰金の刑に処されたとき
  • 暴力団員等になったとき
  • 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である宅建業者法定代理人が一定の欠格事由に該当するに至ったとき
  • 法人の役員政令で定める使用人が一定の欠格事由に該当するに至ったとき
  • 免許を受けてから1年以内に事業を開始しないとき
  • 免許外が必要であるのにもかかわらず新たに免許を受けないことが判明したとき

 

任意的取消事由
  • 営業保証金を供託した旨の届出がないとき
  • 宅建業者の所在地が不明となったとき

 

処分権者

 免許取消処分は免許権者のみ行うことができます。

 

その他

指導等

 国土交通大臣は、すべての宅建業者に対して、必要な指導、助言、勧告を行うことができます。また、都道府県知事は当該都道府県内において、宅建業を営む宅建業者に対して、必要な指導、助言、勧告を行うことができます。

 

内閣総理大臣との協議

 国土交通大臣宅建業者に対して一定の監督処分をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣と協議しなければなりません。

 

内閣総理大臣と協議が必要なもの

  • 重要事項の説明義務違反
  • 37条書面の交付義務違反
  • 誇大広告等の禁止違反
  • 取引態様の明示義務違反
  • 守秘義務違反

都道府県知事が処分を行う場合には、内閣総理大臣との協議は不要です。

 

取引士に対する監督処分

監督処分の種類

 取引士に対する監督処分には処分が軽い順に指示処分、事務禁止処分、登録消除処分の3つがあります。

 

指示処分の内容

対象事由

 都道府県知事は取引士が以下の対象中に該当する場合、取引士に対して必要な処分をすることができます。

 

指示処分の対象事由

  • 宅建業者に対して、専任の取引士として従事している事務所(たとえば本店)以外の事務所(たとえば支店)においても、専任の取引士であることを表示することを許し、宅建業者がその旨を表示したとき
  • 他人に名義を貸し、その他人がその名義を用いて取引士である旨の表示をしたとき
  • 取引士の事務に関し、不正・著しく不当な行為をしたとき

 

処分権者

 指示処分は、登録をしている都道府県知事のほか、取引士が処分の対象となる行為を行った都道府県の知事も行うことができます。

 

事務禁止処分の内容

対象事由

 都道府県知事は、取引士に対して、1年以内の期間を定めて、取引士としてすべき事務の全部または一部を禁止することができます。

 

事務禁止処分の対象事由

  • 指示処分の対象事由に該当するとき
  • 指示処分に従わないとき

 

処分権者

 事務禁止処分は登録をしている都道府県知事のほか取引士が処分の対象となる行為を行った都道府県の知事も行うことができます。

 

登録消除処分の内容

対象事由

 都道府県知事は、取引士が以下の対象事由に該当する場合、その取引士の登録を消除しなければなりません。

 

登録消除処分の対象事由

  • 取引滋賀登録の欠格事由に該当するに至ったとき
  • 不正の手段により登録を受けたとき
  • 不正の手段により、取引士証の交付を受けたとき
  • 事務禁止処分に該当する行為をし、情状が特に重いとき
  • 事務禁止処分に違反したとき
  • 取引士の登録を受けているが、取引士証の交付を受けていないものが取引士としての事務を行ない、情状が特に重いとき

 

処分権者

登録消除処分は、登録した都道府県知事のみ行うことができます。

 

監督処分の手続き

不正処分

聴聞の通知・公示

聴聞

処分

公告

 

聴聞

国土交通大臣又は都道府県知事は宅建業者に対する監督処分や取引士に対する監督処分を行おうとするときは公開の聴聞をしなければなりません。

 

公告

 国土交通大臣又は都道府県知事は業務停止処分又は、免許取消処分をした時は、その旨を官報(国土交通大臣の処分の場合)や公報またはウェブサイトへの記載その他の適切な方法(都道府県知事の処分の場合)で公告しなければなりません。

 

報告・通知

 指示処分、業務停止処分をした都道府県知事は、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に報告(処分を受けた宅建業者国土交通大臣免許の場合)または免許を与えたほかの都道府県知事(処分を受けた宅建業者がほかの都道府県知事の免許を受けている場合)に通知しなければなりせん。

 また指示処分、業務禁止処分をした都道府県知事は、遅滞なく、その旨を処分を受けた取引士の登録している都道府県知事に通知しなければなりません。

 

罰則

 宅建業法に違反した場合、違反者は罰金刑や懲役刑、過料(取引士に対する罰則)に処されます。

 

3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科

l  不正の手段により免許を受けた者

l  無免許で事業をした者

l  名義貸しをして他人に宅建業を営ませた者

l  業務停止処分に違反して業務を営んだ者

2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科。

l  契約の勧誘をするとき等に重要な事実を故意に告げなかったり、不実を告げた者

1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれらの併科。

l  不当に高額の報酬を要求した者

6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれらの併科。

l  営業保証金の供託の届出前に事業を開始した者

l  誇大広告等の禁止に違反した者

l  不当な履行遅延行為をした者

100万円以下の罰金。

l  無免許で宅建業者としての表示・広告をした者

l  名義貸しをして他人に宅建業の表示広告をさせた者

l  専任の取引士の設置義務に違反した者

l  報酬限度額を超えて報酬を受領した者

50万円以下の罰金。

l  変更の届出をしなかったり、虚偽の届出をした者

l  37条書面を交付しなかった者

l  事務所に報酬の額を掲示しなかった者

l  従業者に従業者証明書を掲載させなかった者

l  標識を掲示しなかった者

守秘義務違反をした者

l  帳簿や従業者名簿を備え付けなかったり、記載すべき事項を記載しなかったり、虚偽の記載した者

10万円以下の過料

l  取引士証の返納義務に違反した者

l  取引書の提出義務に違反した者

l  重要事項説明時に取り引き証を提示しなかった者

 

 

おわりに

  監督・罰則は不動産業を営む上で重要な内容です。特に不動産関係で仕事をしている方は見ておいてください。

【5分で納得】自ら売主となる場合の8つの制限

 

 特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 宅建業法には宅建業者が自ら売主となって、素人の買主に対して取引をする場合、素人の方を守るルールがあります。今回は、その8種制限を解説していきます。

 

自ら売主となる場合の8の制限(8種制限)

8種制限

  • クーリングオフ制度
  • 瑕疵担保責任の特約の制限
  • 損害賠償額の予定等の制限
  • 手付の性質、手付の額の制限
  • 手付金等の保全措置
  • 自己所有に属しない物件の売買契約(他人物売買)の制限
  • 割賦販売契約の解除等の制限
  • 所有権留保等の禁止

 

なお、この制限は売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の一般人となる場合にのみ適用されます。

 

クーリングオフ制度①

 クーリングオフ制度とは、お客さんが一旦行った契約や申込みをキャンセルことをいいます。

 

クーリングオフが出来ない場所

 ただし、どんな場合にもクーリングオフができるわけではなく、以下の場所で契約を締結したり、申し込みをした場合にはクーリングオフは適用されません。

 

  • 事務所
  • 以下の場所で専任の取引士を設置する義務がある場所

事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設を有する場所

一団の宅建建物の分譲を行う、土地に定着する案内所

宅建業者が売主となりほかの宅建業者に媒介又は代理を依頼したときはほかの宅建業者の事務所、事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設を有する場所、一団の宅建建物の分譲を行う、土地に定着する案内所に該当する場所

  • 売主が自ら申し出た場所の自宅、勤務先

 

申込みの場所と契約締結場所が異なる場合

 例えば、宅建業者の事務所で買受けの申込みを行い、後日、喫茶店で約束を締結したというように買受けの申込み場所と契約を締結した場所が異なる場合、クーリングオフ制度が適用されるかどうかは申込みの場所で判断します。

 

申込みの場所

契約の場所

クーリングオフ

事務所…×

茶店…◯

できない

茶店…◯

事務所…×

できる

◯…クーリングオフできる場所

×…クーリングオフできない場所

 

クーリングオフができなくなる場所

 以下の場合にはたとえ買受けの申込みの場所がクーリングオフできる場所に該当していても、クーリングオフができなくなります。

 

  • クーリングオフができる旨、方法を宅建業者から書面で告げられた日から起算して8日を経過した場合
  • 買主が宅地・建物の引渡しを受け、かつ、代金の全額を支払った場合

 

クーリングオフの方法

 クーリングオフは必ず書面で行わなければなりませんまた買主が書面を発した時クーリングオフの効果が生じます。

 

クーリングオフの効果

 適正にクーリングオフがされた場合嬉しいは既に受け取った手付金や代金をすべて返さなければなりません。また、宅建業者クーリングオフに伴う賠償金や違約金の支払を請求することはできません。

 

瑕疵担保責任の特約の制限②

 瑕疵担保責任とは、売買の目的物にキズや欠陥があった場合に売主が負う責任をいいます。

 

民法の規定

 民法の規定によると、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、善意無過失の買主は、瑕疵を発見した時から1年以内に限り、売主に対して、損害賠償の請求ができます。また、瑕疵がひどすぎて目的が達成できなかった場合には、契約の解除もできます。なお、民法では、「瑕疵があっても売主は瑕疵担保責任を負わない」等の特約をつけることもできるとしています。

 

宅建業法の規定

 宅建業法では、瑕疵担保責任について民法の規定よりも買主に不利となる特約はしてはいけない、と規定しています。ただし、瑕疵担保責任の追及期間について、特約で引渡し日から2年以上の期間を定めた場合、その特約は有効となります。

 

損害賠償額の予定等の制限③

民法の制限

 事前に損害賠償額の取り決めをしていなかった場合には、損害を被った側の実損額(実際に損をした額)が損害賠償額となります。また、損害賠償額を事前に決めておくこともでき、これを損害賠償額の予定といいます。民法では、損害賠償の予定額には制限がありません。

 

宅建業法の規定

損害賠償額を予定し、または違約金の定めをする場合

 損害賠償額の予定と違約金の合計額は代金の20%まで、それを超える場合は超える部分について無効。

 

損害賠償額を予定しない、または違約金の定めがない場合

 実損額を請求できます。

 

手付の性質、手付額の制限④

手付の性質の制限

 手付とは、売買契約において買主が売主に対してあらかじめ交付する金銭とをいいます。

 

種類

証約手付

契約の成立を証するために交付される手付

違約手付

契約違反があった場合に募集されるものとして交付される手付

解約手付

売買契約を解除する時に用いられるものとして交付される手付

買主は売主が履行に着手するまで手付を放棄して契約を解除することができる。

売主は買主が履行に着手するまで手付の倍額を買主に償還して契約を解除することができます。

 

民法の規定

 民法では、手付の種類は当事者の合意によって決められます。なお、特段の定めがない場合の手付は、解約手付と推定されます。

 

宅建業法の規定

 宅建業法では、手付がどんな種類であったとしても、解約手付とされます。

 

手付の額の制限

民法の規定

 民法では、手付の額は当事者で自由に決めることができます。

 

宅建業法の規定

 宅建業法では、宅建業者が自ら売主となる売買契約については、手付の額は代金の2/10を超えることができないとしています。なお、2/10をこえる定めをした場合には、その超える部分が無効となります。

 

手付金等の保全措置⑤

手付金等の保全措置の必要性

 手付金は、契約締結後、物件の引渡前に売主に支払われます。不動産売買では物件の代金が大きいので、手付金も何千万円になることがあります。もし、宅建業者が手付金を受け取った後、倒産してしまったら買主は物件は受け取れないわ、何千万万円もの手付金は返してもらえないわ、と散々な目にあってしまいます。そのため、宅建業者は手付金等の保全措置をした後でなければ、手付金等を受け取れないことになっています。

 

保全措置の内容

 

未完成物件の場合

完成物件の場合

保全措置の方法

l  銀行との保証委託契約

l  保険会社との保証保険契約

l  銀行との保証委託契約

l  保険会社との保証保険契約

l  指定保管期間による保全措置

例外

l  買主への所有権移転登記がされたとき(又は買主が所有権の登記をした時)

l  手付金等の額が代金の5%以下かつ1,000万円以下

l  手付金等の額が代金の10%以下かつ1,000万円以下

 

ポイント

  • 保全措置が必要にもかかわらず、宅建業者がそれをしなかった場合、買主は手付金等の支払を拒絶することができます。

 

自己所有に属さない物件の売買契約の制限⑥

民法の規定

 民法では、他人の物を売る契約は有効となります。

 

宅建業法の規定

 宅建業者が自ら売主となる場合は、原則として他人物売買は禁止されています。ただし、例外として、他人物売買ができる場合があります。

 

原則

 宅建業者は自ら売主として自己所有に属さない物件の売買契約(売買予定契約を含む)を締結してはいけません。

 

例外

  • 自己の所有に属さない物件であっても、現在の所有者との間で、宅建業者が物件を取得する契約を締結している場合には、売買契約(売買予定契約を含む)を締結できます。
  • 宅建業者は自ら売主として未完成物件を売ることはできません。ただし、手付金の保全措置を講じている時、手付金等の保全措置を講じる必要がない時には、未完成物件を売ることができます。

 

※⑦割賦販売契約の解除等の制限と⑧所有権留保等の禁止については、また後日説明いたします。

 

おわりに

 宅建業者宅建業の知識のない買主に対して、不利になる売買をしないために、8種制限があります。そこを頭に置いた上でもう一度読んでみてください。

【10で納得】業務上の規制

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 みなさんは情報を操作されて、騙されたことはありますか?最近、ネットショッピングで買った物は本当に自分で選びましたか?広告に惑わされていませんか?

 不動産業界では、専門的な知識がない消費者を守るための広告に関する規制があります。それを含めた業務上の規制を今回は解決していきます。

 

媒介契約・代理契約

媒介と代理

 媒介とは、宅建業者が宅地・建物の売主(または買主)から依頼を受けて買主(または売主)を探すことをいいます。

 一方、代理とは宅建業者が当事者に代わって売買契約等を締結することをいいます。宅建業法では、媒介契約と代理契約について、同じような規制をしています。

 

媒介契約の種類

 

一般媒介契約

専任媒介契約

専属専任媒介契約

依頼者は、ほかの宅建業者に重ねて媒介を依頼できるか?

×

×

依頼者は、宅建業者が探した相手方以外の人と契約することができるか?

×

 

 一般媒介契約では、依頼者がほかの宅建業者に重ねて依頼した時に、ほかの宅建業者を明示する義務がある明示型とその義務がない非明示型がある。

 

媒介契約の規制

 一般媒介契約以外の媒介契約(専任媒介契約と専属専任媒介契約。以下「専任媒介契約等」)においては①有効期間、②業務処理状況の報告、③指定流通機構への登録について規制があります。また、すべての媒介契約において、④宅地・建物の売買・交換の申込みがあった場合の報告について規制があります。

 

  • 有効期間

専任媒介契約等を締結した場合、その契約の有効期間は3ヶ月を超えることができません。もし3ヶ月を超える期間を定めた場合には、強制的に3ヶ月となります。なお、有効期間が満了した後は依頼者から申し出がある場合のみ契約を更新することができます。自動更新は不可更新後の有効期限も3ヶ月となります。

 

  • 業務処理状況の報告

専任媒介契約等を締結した場合、宅建業者は依頼者に対し、業務内容を定期的に報告しなければなりません。報告の頻度は、専任媒介契約の場合は2週間に1回以上専属専任媒介契約の場合は1週間に1回以上となります。

 

  • 指定流通機構への登録

専任媒介契約等を締結した場合、国土交通大臣の指定する(流通機構不動産の流通情報システム。レインズともいう)へ登録が義務付けられています。指定流通機構への登録機関は、専任媒介契約の場合は契約日から7日以内(休業日を除く)、専属専任媒介契約の場合は、契約日から5日以内(休業日を除く)です。

 

  • 宅地建物の売買交換の申し込みがあった場合の報告

媒介契約(一般・専任・専属専任媒介契約)を締結した宅建業者は媒介契約の目的物である宅地・建物の売買又は交換の申し込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければなりません。そして、これに反する特約は無効となります。

 

媒介契約の種類と規制のまとめ

 

 

一般媒介契約

(明示型・非明示型)

専任媒介契約

専属専任媒介契約

内容

同時に複数の業者に依頼

×

×

 

自己発見取引

×

規制

有効期間

規制なし

3ヶ月以内

3ヶ月以内

 

依頼者への業務処理状況の報告義務

義務なし

2週間に1回以上

口頭でも可

1週間に1回以上

口頭でも可

 

指定流通機構への登録義務

規制なし

契約日から7日以内

休業日を除く

契約日から5日以内

休業日を除く

 

宅地・建物の売買・交換の申し込みがあった場合の報告義務

遅滞なく

遅滞なく

遅滞なく

 

指定流通機構について

  • 指定流通機構に登録する内容は次の通り

宅地・建物の所在、規模、形質、売買すべき価格

宅地建物に係る都市計画法その他の法律令に基づく制限で主要なもの

専属専任媒介の場合はその旨

  • 指定流通機構に登録した宅建業者は、指定流通機構が発行する登録を証する書面を、遅滞なく、依頼者に引き渡さなければならない
  • 宅建業者は、登録した宅地建物の売買や交換の契約が成立したときは、遅滞なく、その旨を指定流通機構に通知しなければならない

 

媒介契約書面(34条の2書面)

 宅建業者は宅地・建物の売買または交換の売買契約を締結したときは、遅滞なく、その内容を記載した書面(媒介契約書面)を作成し、依頼者に交付しなければなりません。

 

媒介契約書面(34条の2書面)のポイントと記載事項

ポイント

  • 宅地・建物の売買・交換の媒介の場合に交付が必要(貸借の媒介の場合は不要)
  • 媒介契約書面には宅建業者記名押印が必要(「取引士」ではない)
  • 交付場所はどこでもよい(宅建業者の事務所である必要はない)

 

記載事項
  • 宅地建物を特定するために必要な表示

所在、地番、面積等

  • 売買すべき価格または評価額(媒介価格)

宅建業者が媒介価格に意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

  • 媒介契約の種類

一般、専任、専属専任

  • 報酬に関する事項
  • 有効期限及び解除に関する事
  • 契約違反があった場合の措置
  • 媒介契約が標準媒介契約約款に基づくものかどうか
  • 指定流通機構への登録に関する事項

一般媒介契約の場合でも省略は不可

  • 既存の建物の場合、依頼者に対する建物状況調査を実践する者の斡旋に関する事項

 

広告に関する規制

誇大広告等の禁止

 宅建業者は、その業務について広告をする時は、宅地・建物に関し、著しく事実を掃除する表示または実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示をすること(誇大広告等)は禁止されています。

 

  • 広告な手段は新聞やチラシ、インターネット等も含む
  • おとり広告も禁止されている
  • 誇大広告と行った場合、実際に損害を受けた人がいない場合でも宅建業法違反となる。

 

広告の開始時期、契約締結の時期の制限

 宅建業者は、未完成物件について、開発許可(宅地の造成工事の場合)や建築確認(建物の建築工事の場合)を受ける前は、その物件にかかる広告をすることはできません。また、開発許可や建物 建築確認を受ける前は、契約することもできません。ただし、貸借(貸借の代理・媒介)の場合には、開発許可や建築確認を受ける前でも、契約することができます。

 

取引態様の明示義務

 宅建業者宅建業に関する広告をする際には、取引様態(自ら売買・交換、売買・交換、貸借の代理、売買・交換・貸借の媒介)を広告に記載しなければなりません。また、宅建業者は、宅建業に関する注文を受けた際には、遅滞なく、取引様態を明示しなければなりません。

 

ポイント

  • 広告をする時に取引態様を明示していても、注文を受けた時には再度明示が必要。
  • 明示方法は書面でも口頭でもよい。

 

重要事項の説明(35条書面)

重要事項の説明・交付

 宅建業者は、契約が成立するまでに、お客さん(宅建業者を除く)に対して、一定の重要事項を書面を用いて説明しなければなりません。

 なお、お客さんが宅建業者である場合には35条書面の交付は必要ですが説明は不要です。

 

誰が説明する?

 取引士

 

誰に説明する?

 売買の場合:買主

 貸借の場合:借主

 交換の場合:両当事者

 

いつ説明する?

 契約が成立するまで

 

どのように説明・交付する?

宅建業者以外に対しては

  • 取引士の記名押印がある重要事項説明書(35条書面)を交付して説明
  • 説明の際、取引士証を提示する必要がある
  • 説明をテレビ会議等のITを活用して行うことは、宅地・建物の貸借の代理・媒介の場合一定の要件を満たせばできる。

 

宅建業者に対しては

  • 取引士の記名押印がある重要事項説明書(35条書面)の交付のみでよい

 

どこで説明する?

 規制なし(どこでもよい)

 

重要事項の説明の内容

取引物件に関すること

 

売買・交換

貸借

 

宅地

建物

宅地

建物

①    登記された権利の種類・内容等

②    法令上の制限

※1

※2

③    私道負担に関する事項

 

④    電気、ガス、水道等の供給施設、排水施設の整備状況

⑤    既存建物の場合、建物状況調査の結果、建物の建物・維持保全の状況に関する書類の保存の状況

 

 

※3

⑥    未完成物件の場合、完了時の形状構造等

⑦    造成宅地防災区域内か否か

⑧    土砂災害警戒区域内か否か

⑨    津波災害警戒区域内か否か

⑩    石綿使用の調査の内容

 

 

⑪    耐震診断の内容

 

 

⑫    住宅性能評価を受けた新築住宅

 

 

 

※1土地所有者に限って適用されるものは説明事項とされない。

※2建物の賃借人に適用されるものが説明事項となる。

※3建物の建築維持保全の状況に関する書類の保存状況は、売買・交換に限る。

 

区分所有建物(マンション等)における追加説明

 

区分所有建物(マンション等)

売買・交換

貸借

①    敷地に関する権利の種類・内容

 

②    共通部分に関する規約

 

③    専有部分の用途その他の理由も制限に関する規約

④    専用使用権に関する規約

 

⑤    建物の所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約

 

⑥    修繕積立金の内容すでに積み立てている額

 

⑦    通常の管理費用の額

 

⑧    管理の委託先

⑨    建物の維持修繕の実施状況

 

 

取引条件に関すること

 

売買・交換

貸借

 

宅地

建物

宅地

建物

①    代金、交換差金、借賃以外に授受される金銭

②    契約の解除

③    損害賠償額の予定、違約金

④    手付金保全措置の概要

 

 

⑤    支払金、預かり金の保全措置の概要

⑥    代金、交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容、貸借不成立時の措置

 

 

⑦    瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要

 

 

 

賃貸借契約における追加説明

 

貸借

 

宅地

建物

①    台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備

 

②    契約期間、契約の更新に関する事項

③    当該宅地・建物の用途その他の利用の制限に関する事項

④    当該の宅地・建物の管理が委託されているときは、委託先の氏名および住所

⑤    敷金その他契約終了時に生産されることとされている金銭の精算に関する事項

⑥    定期借地権である場合はその旨

 

⑦    定期建物賃貸借である場合はその旨

 

⑧    高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定する終身建物賃貸借をしようとするときはその旨

 

⑨    契約終了時における宅地上の建物の取り壊しに関する事項を定めようとするときはその内容

 

 

供託所等の説明

 宅建業者は、契約が成立するまでに、お客さんに対して、供託所等に関する事項について説明しなければなりません。なお、お客さんが宅建業者である場合には、供託所等に関する事項について説明する必要はありません。

 

説明事項

宅建業者が保証協会に加入していない場合

 営業保証金を供託した供託所とその所在地

 

宅建業者が保証協会に加入している場合

  • 保証協会の社員である旨
  • 保証協会の名称、住所、事務所の所在地
  • 保証協会が弁済業務保証金を供託している供託所、所在地

 

ポイント

  • 供託所等について契約が成立するまでに説明しなければならない。
  • 説明の方法は文書でも口頭でもよい。
  • 取引氏が説明する必要はない。
  • 宅建業者に対しては説明は不要。

 

契約書(37条書面)の交付

契約書(37条書面)の交付

 宅建業者は契約が成立した後契約内容を記載した書面(37条書面)を交付しなければなりません。

 

説明は?

 不要

 

誰が交付する?

 宅建業者

 

誰に交付する?

 契約の両当事者

 

いつ交付する?

 契約が成立したあと

 

何を交付する?

 取引士の記名押印がある契約書面(37条書面)

 

どこで交付する?

 規制なし(どこでも良い)

 

契約書(37条書面)の記載事項

 

売買・交換

貸借

必ず記載する事項

①    当事者の氏名(法人の場合は名称)および住所

②    宅地・建物を特定するのに必要な表示

③    代金・交換差金・借賃の額、その支払い時期、支払方法

④    宅地・建物の引渡時期

⑤    移転登記の申請の時期

 

⑥    既存の建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項

 

その定めがあるときに記載が必要な事項

⑦    代金・交換差金・借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるとき

→その額、金銭の授受の時期、目的

⑧    契約解除に関する定めがある時

→その内容

⑨    損害賠償額の予定違約金に関する定めがある時

→その内容

⑩    危険負担(天災その他の不可抗力による損害負担)に関する定めがある時

→当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置

⑪    代金・交換盛んについての金銭の貸借ローンの斡旋に関する定めがある時

→当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置

 

⑩    瑕疵担保責任(当該宅地・建物の瑕疵を担保すべき責任)又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがある時

→その内容

 

⑪    当該宅地・建物にかかる租税その他の公課の負担に関する定めがある時

→その内容

 

 

その他の業務上の規制

業務に関する禁止事項

重要な事実の不告知、不実のことを告げる行為の禁止

 契約の締結の勧誘をする際、または契約の申込みの撤回解除債権の行使をさせないようにするため、重要な事項についてわざと事実を告げなかったり、嘘を言ってはいけない

 

重要な事項

  • 第35条の重要事項
  • 供託所等に関する事項
  • 第37条の契約書面の記載事項
  • その他、相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項

 

不当に高額な報酬を要求する行為の禁止

 宅建業者は不当に高額な報酬を要求することはできない。

 

ポイント

  • 実際に受け取っていなくても要求したらアウト。

 

手付貸与等の禁止

 宅建業者が手付金を課したり立て替えたりすることによって契約の締結を誘導してはいけない。

 

ポイント

  • 実際に契約していなくても、誘導したらアウト

 

断定的判断の提供の禁止

 契約の締結の勧誘に際し、利益が生じることが確実であると誤解させるような断定的判断の提供をしてはいけない。

 

ポイント

  • 実際に契約していなくても、断定的判断をしたらアウト
  • 過失でもアウト

 

威迫行為の禁止

 契約の締結の勧誘をするためまたは契約の申込みの撤回解除をさせないようにするため相手方を威迫してはいけない。

 

その他の禁止事項
  • 宅地建物の将来の環境や交通などの利便について誤解させるべき断定的判断の提供をすること。
  • 正当な理由なしに、契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと。
  • 勧誘に先立って宅建業者の商号名称、当該勧誘を行う者の氏名や契約の締結について勧誘する目的であることを告げずに勧誘を行うこと。
  • 迷惑を覚えさせるような時間に電話をしたり、訪問すること。
  • 新山田は長時間の勧誘その他の私生活または業務の平穏を害するような方法でそのものを困惑させること。
  • 相手方が契約の申込みの撤回を行うのに際し、既に受け取っている預かり金の返還を拒むこと。
  • 相手方が手付金を放棄して契約を解除しようとしているのに、正当な理由なしに契約の解除を拒んだり、妨げたりすること。

 

その他の一般的な禁止事項

守秘義務

 宅建業者やその従業員は正当な理由なしに業務上知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。宅建業者が廃業したり、従業員が退職した後でも同様の守秘義務が課せられます。

 

正当な理由の例

  • 本人の承諾がある場合
  • 裁判で証人として証言を求められた場合
  • 取引の相手方に真実を告げなければならない場合

など

 

不当な履行遅延の禁止

 宅建業者は、その業務に関してなすべき、宅地・建物の登記、引渡し、代金の支払等の行為を不当に遅延してはいけません。

 

おわりに

 宅建業法の中でも、この業務上の規制は非常に重要です。少なくとも3回は繰り返し読み、イメージを掴んでください。

【5分で納得】事務所、案内所等に関する規制

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 みなさんは億ションに住みたいと思いますか?僕は一度でいいから、中に入ってみたいです。

 今回は、一度はみたことであろうモデルルームなどの案内所の規制を解説していきます。

 

宅建業者が業務を行う場所

 宅建業者が業務を行う場所には事務所のほか、モデルルームや現地販売センターなど(案内所等)があります。

 案内所等については、そこで申し込みを受けたり、契約が締結するかどうかによって規制が変わってくるので、ここでは①事務所、②申し込み契約をする案内所等、③申込契約をしない案内所等の3つに分けます。

 

案内所等の届出

 申込み・契約をする案内所等を設ける場合には、業務を開始する10日前までに「免許権者」と「案内所等の所在地を管轄する都道府県知事」の両方に届け出をしなければなりません。

 

事務所、案内所等に備え付けなければならないもの

 ①事務所と②申込み・契約をする案内所等については、国土交通省で定める数の成年者である専任の取引士を設置しなければなりません。

 

専任の取引士の設置

設置すべき成年者である専任の取引士の数
  • 事務所

業務に従事する者の5人に1人以上

 

  • 申込み契約をする案内所等

1人以上

 

  • 申込み契約をしない案内所等

不要

 

「成年者」

原則

20歳以上の人

 

例外

  • 婚姻した人
  • 宅建業者となった人(法人の場合は役員)

 

「専任」

その事務所や案内所等に常勤していること

 

不足する場合
  • 取引士の数が不足する場合は、その事務所等を開設することはできない。
  • 既存の事務所等で取引士の数が不足するに至った場合は、2週間以内に補充等をしなければならない。

 

標識

 すべての事務所、案内所等には、公衆の見やすい場所に標識掲示しなければなりません。なお、標識の記載事項は、業務を行う場所ごとに異なります。

 

標識の掲示
  • 事務所

必要

 

  • 申込み契約をする案内所等

必要

 

  • 申込み契約をしない案内所等

必要

 

ポイント

  • 宅建業者が一団の宅地建物の分譲を行う場合には、その宅地や建物が存在する場所(現地)にも標識が必要。

 

  • 宅建業者が案内所を設置して自分で建てたマンションの分譲を自分でする場合には、現地と案内所に標識が必要。

 

  • 宅建業者が一団の宅地建物の分譲の代理又は、媒介を案内状を設置して行う場合には、その案内所にも標識が必要。

宅建業者(A)が他社(B)の建てたマンションの分譲の代理を案内状を設置して行う場合には、現地にAの標識、案内所にBの標識が必要。

 

共通事項
  • 事務所
  • 申込み契約をする案内所等
  • 申込み契約をしない案内所等

免許証番号、免許の有効期限、商号又は名称、代表者の氏名、本店の所在地

 

個別記載事項
  • 事務所

専任の取引士の氏名

 

  • 申込み契約をする案内所

専任の取引士の氏名

土地に定着している案内状等以外は、クーリングオフ制度の適用がある旨

 

  • 申込み契約をしない案内所等

クーリングオフ制度の適用がある旨

 

帳簿

 宅建業者は事務所ごとに取引の内容を記載した帳簿を備え付けなければなりません。

 

帳簿の備付け
  • 事務所

必要

 

  • 申込み・契約をする案内所等

不要

 

  • 申込み・契約をしない案内所等

不要

 

ポイント

  • 事務所ごとなので本店には本店の取引を記載した帳簿を支店には支店の取引を記載した帳簿を備え付けなければなりません。

 

保存期間

 各事業年度末に閉鎖し、閉鎖後5年間保存しなければなりません。

 

従業員名簿

 宅建業者は、事務所ごとに従業者の情報を記載した従業者名簿を備え付けなければなりません。

  • 事務所

必要

 

  • 申込み・契約をする案内所等

不要

 

  • 申込み・契約をしない案内所等

不要

 

ポイント

  • 事務所ごと」なので、本店には本店の従業員の情報を記載した名簿を支店には支店の情報を記載した名簿備え付けなければなりません。
  • 従業者名簿には、従業者の氏名・生年月日等のほか、取引士であるか否かも記載されます。

 

保存期間

 最終の記載をした日から10年間

 

閲覧

 取引の関係者から請求があった場合には閲覧させなければなりません。

 

報酬額の掲示

 宅建業者事務所ごと報酬額掲示しなければなりません。

 

報酬額の掲示
  • 事務所

必要

 

  • 申込み・契約をする案内所等

不要

 

  • 申込み・契約をしない案内所等

不要

 

従業者証明書の携帯義務

 宅建業者は従業者に従業者証明書(従業員であることを証明する証明書)を携帯させなければなりません。

 

おわりに

 設置義務を一覧にしました。ご確認お願いします。

 

 

事務所

申込み・契約をする案内所

申込み・契約をしない案内所

専任の取引士

(従業者5人につき1人以上)

(1人以上)

×

標識

帳簿

×

×

従業員名簿

×

×

報酬額

×

×

 

【5分で納得】保証協会

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

  今回は保証協会を解説していきます。営業保証金との違いを意識すると理解しやすいです。

 

保証協会

保証協会

 宅建業を始めるには営業保証金を供託しなければなりませんが、その額は大きく事務所が1カ所だったとしても1000万円も供託しなければなりません。そのため、誰もが気軽に宅建業を始められるというものではありません。そこで保証協会という制度が用意されており、この保証協会に加入すると、営業保証金の供託が免除されます。

 

保証協会の業務

必須業務(必ず行わなければならない業務)

  • 苦情の解決
  • 宅建業に関する研修
  • 弁済業務←これがメイン

社員(保険協会に加入している宅建業者)と取引をした相手方(宅建業者を除く)の債権について弁済

 

任意業務(国土交通大臣の承認を受けて行うことができる業務)

  • 一般保証業務

宅建業者が受領した預かり金の返還債務等を連帯して保証

  • 手付金等保管事業

宅建業者を代理して手付金を受領し、保管

  • 研修実施に要する費用の助成業務

全国の宅建業者を直接または間接の社員とする一般社団法人に対する宅建士等への研修の実施に要する費用の助成

 

社員

 保証協会に加入している人(宅建業者)を社員といいます。保証協会に加入するかどうかは任意ですが、一つの保証協会の社員となったら、他の保証協会の社員とはなれません。

 

保証協会の弁済業務の流れ

  • 保証協会に加入しようとする者は加入しようとする日までに(弁済業務保証金)分担金を保証協会に納付します
  • 保証協会は①の分担金に相当する額を供託所(指定供託所)に供託します。
  • 宅建業に関する取引によって
  • 顧客(宅建業者を除く)に損害が発生したら
  • 顧客(保証協会)に対して、認証の申出をします
  • 認証されたら
  • 供託所に対して還付請求をします。
  • 還付請求に基づいて供託書は損害を補填します。
  • ⑧によって供託額が不足するので、国土交通大臣は保証協会に対して「不足額を供託して」と通知します
  • 保証協会は許諾書に不足金額を供託します
  • 保証協会は、宅建業者に「あなたが関わった損害金を供託してあげた(立て替えた)のだから、その分充当して」と通知します。
  • 宅建業者は保証協会に還付充当金を納付します。
  • 宅建業者が事業をやめる場合などには、保証協会を通じて分担金を取り戻すことができます。

 

弁済業務保証金分担金の納付

 宅建業者が保証協会に加入するには、加入しようとする日までに、加入後に新たに事務所を設置した時には、新たに事務所を設置した日から2週間以内に弁済業務保証金分担金保証協会に納付しなければなりません。

 

分担金の納付

 以下の①②の場合には、分担金をそれぞれの期限までに保証協会に納付しなければなりません。

  • 宅建業者が保証協会に加入しようとする場合

加入しようとする日まで

  • 加入後に新たに事務所を設置する場合

→新たに事務所を設置した日から2週間以内

 

納付する額

  • 本店(主たる事務所)につき60万円
  • 支店1カ所につき30万円

 

納付するもの

金銭のみ

 

弁済業務保証金の供託

 保証協会は、宅建業者から納付された分担金(全額)を納付から1週間以内に法務大臣及び国土交通大臣が定める供託所に供託しなければなりません。

 

供託するもの

金銭または有価証券

 

届出

 保証協会は供託後、社員である宅建業者の免許権者に供託に係る届出をしなければなりません。

 

弁済業務保証金の還付

 保証協会の社員(宅建業者)と宅建業に関する取引をした人(宅建業者を除く)は、その債権について弁済業務保証金から還付を受ける権利があります。

 

還付受けられる人

 保証協会の社員(宅建業者)と宅建業に関し取引をした人(宅建業者を除く)で、その取引によって生じた債権を有している人   

 

ポイント

  • その宅建業者が保証協会の社員になる前に取り引きした人(宅建業者を除く)もう還付を受けられます。

 

還付額

 その宅建業者が保証協会の社員でなかったとしたら、そのものが供託しているはずの営業保証金の範囲内

 

還付の請求手続き

  • 弁済業務保証金から還付受けるには、弁済を受けることができる額について、保証協会の認証を受けなければなりません。
  • 還付請求は供託所に対して行います。

 

弁済業務保証金の不足額の供託

 弁済業務保証金の還付が行われると指定供託所内の弁済業務保証金が減少してしまうため、その不足分を補充する必要があります。その補充は、まず保証協会が行います。保証協会は国土交通大臣から還付の通知を受けた日から2週間以内に還付された額と同額の弁済業務保証金を指定供託所に供託しなければなりません。

 

還付充当金の納付

 保証協会が仮払いしている額は、最終的には(取引の相手方に損害を与えた)宅建業者が負担します。宅建業者は保証協会から還付充当金を納付すべき通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を保証協会に納付しなければなりません。なお、宅建業者が期限内に納付しないときは、保証協会の社員の地位を失います。

 

弁済業務保証金の取戻し等

弁済業務保証金の取戻し

 宅建業者が保証協会の社員で亡くなった時や社員が一部の事業所を廃止した時には、保証協会は指定供託書から弁済業務保証金を取り戻すことができます。

 

弁済業務保証金分担金の返還

 保証協会は取り戻した弁済業務保証金と同額の分担金を宅建業者に返還します。なお、宅建業者が保証協会の社員で亡くなったために弁済業務保証金を取り戻す時は保証協会は6ヶ月を下らない一定期間(要するに6ヶ月以上の期間)を定めて公告(「債権を持っている人は申し出てください」というお知らせ)をしなければなりません。

 

社員の地位を失った場合

 宅建業者が保証協会の社員の地位を失った場合で、その後も宅建業を営むときは、社員の地位を失った日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません。

 

おわりに

 保証協会は営業保証金制度との違いを比べながら、読み進めていくと理解しやすいです。細かい数字なども試験には出ますので、しっかりと見ておいてください。

【5分で納得】営業保証金

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 今回は営業保証金を解説していきます。

 

営業保証金制度

 営業保証金制度とは、宅建業者と取引をし、損失を被った相手方(宅建業者を除く)がいる場合に、その損失を補償する制度です。

  1.  宅建業者は事業開始前に本店最寄りの供託所に営業保証金を供託します。
  2. 顧客(宅建業者を除く)が、宅建業者宅建業に関する取引をして
  3. 損害が発生したら
  4. 顧客は供託所に「損害を補填して」と営業保証金の還付請求をします。
  5. 還付請求に基づいて供託所は損害を補填します。
  6. 5.によって供託が不足するので、免許権者は宅建業者に対して不足額を供託してと通知します。
  7. 宅建業者は不足額を供託します。
  8. 宅建業者が事業をやめる場合などには、供託しておいた営業保証金を取り戻すことができます。

 

営業保証金の供託

営業保証金の供託

 宅建業者は営業保証金を本店(主たる事務所)最寄りの供託所(法務局)に供託しなければなりません。

 

供託する額

  • 本店(主たる事務所)につき1000万円
  • 支店1か所につき500万円

 

供託するもの

金銭のほか、有価証券でもOK

 

有価証券の場合

 

営業保証金の供託の届出

 宅建業者は営業保証金を供託した旨を免許権者(国土交通省又は都道府県知事)に届け出た後でなければ事業を開始することはできません。

 

免許取得

供託

届出

事業開始

 

供託した旨の届出が無い場合

催告

 免許権者は免許を与えた日から3ヶ月以内に宅建業者から供託の届出が無い場合には、届出すべき旨の催告をしなければなりません。

 

免許取消

 免許権者は催告が届いた日から1ヶ月以内に宅建業者から供託の届出が無い場合には、免許を取り消すことができます。  

 

事務所を新設した場合の営業保証金の供託

 宅建業者が事務所(支店)を新設した時には、新設した事務所ごとに500万円を本店最寄りの供託所に供託しなければなりません。

 

保管替え等

 本店を移転したことにより、最寄りの供託所が変更した場合、従来の供託所に預けている営業保証金を新たな供託所(新たな本店の最寄りの供託所)に移転しなければなりません。

 

金銭のみで供託している場合

 遅滞なく、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の本店最寄りの供託所への保管替えを請求しなければなりません。

 

それ以外の場合

 遅滞なく、営業保証金を移転後の本店最寄りの供託所に新たに許諾しなければなりません。

 

営業保証金の還付

還付を受けられる人

 宅建業者宅建業に関し取引した人(宅建業者を除く)で、その取引によって生じた債権を有している人

 

還付額

 供託されている営業保証金の範囲内

 

営業保証金の追加供託

 営業保証金の還付が行われると、供託している額に不足が生じるため、その不足額を追加で供託する必要があります。宅建業者は、免許権者から不足額供託の通知を受けた日から2週間以内に供託所に追加供託をしなければなりません。また、追加供託をした日から2週間以内に、その旨を免許権者に届け出なければなりません。

 

営業保証金の取戻し

取戻し

 宅建業者が営業保証金を供託所から返してもらうことを(営業保証金の)取戻しといいます。

 

取戻しの方法

 営業保証金を取戻すときは、原則として6ヶ月を下回らない一定期間(要するに6か月間以上の期間)を定めて、公告(「債権を持っている人は申し出てください」というお知らせ)をしなければなりません。そして、その期間の経過後でなければ営業保証金を取戻すことはできません。ただし、一定の場合には広告せずに(直ちに)取り戻すことができます。

 

取戻し事由

公告の要否

免許の有効期間が満了した

6ヶ月以上の期間を定めて公告が必要

廃業・破産等の届出により免許が失効した

免許取消処分を受けた

一部の事務所を廃業した

(有価証券による供託をしている場合で)

本店移転により、最寄りの供託所を変更した

公告不要

保証協会の社員になった

 

届出

 営業保証金を取り戻すための広告をした場合には、遅滞なく、その旨を免許権者に届け出なければなりません。

 

おわりに

 細かい部分を覚えるところが出ていたので、忘れた頃に何度も見返して、頭に刷り込んでください。

【5分で納得】宅建建物取引士

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 今回は宅建建物取引士を解説していきます。

 

取引士になるまでの流れ

 取引士(宅建建物取引士)とは、取引証の交付を受けたものをいいます。

 

取引士試験合格 有効期間:一生

取引士試験の合格者

  • 不正受験は合格を取り消されることがある。

また、3年以内の受験を禁止されることもある。

  • 宅建試験に合格した者は、取引士試験に合格したものとみなす。

 

↓登録の申請【任意】:試験合格地の都道府県知事に申請

 

取引士資格登録 有効期間:一生

登録条件  

  • 欠格事由に該当しない。
  • 2年以上の実務経験がある

又は、国土交通大臣の登録実務講習を修了した。

 

↓交付の申請【任意】:登録地の都道府県知事に申請。

 

取引士証の交付 有効期限:5年

交付の条件

  • 都道府県知事の法定講習を受講。
  • 試験合格後、1年以内に取引士証の交付を受ける場合は、法定講習は免除される。

 

取引士ではできない仕事

  • 重要事項の説明
  • 35条書面(重要事項説明書)への記名押印
  • 37条書面(契約書)への記名押印

 

ポイント

  • 上記の仕事を行うには、取引士であればよく、専任の取引士である必要はありません。

 

欠格事由(取引士の登録の欠格事由)

欠格事由①(宅建業者の免許の欠格事由と共通するもの)

成年被後見人被保佐人、破産者で復権を得ない者

成年被後見人被保佐人破産者で復権を得ない者は登録を受けることができません。

 

一定の刑罰に処された者

禁錮以上の刑、宅建業法違反により罰金の刑、暴力的な犯罪・背任罪により罰金の刑に処され、刑の執行が終わった日から五年を経過していない者は登録を受けることができません。

 

暴力団員等

暴力団員または暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者は登録を受けることができません。

 

一定の理由で免許取消処分を受けた者

その1

 不正手段により免許を取得した、業務停止処分に該当する行為をし情状が特に重い、業務停止処分に違反した理由で免許取り消し処分を受けたもので、免許取り消しの日から5年を経過しない者は登録を受けることができません。

 

法人の場合

 免許取消に係る聴聞公示の日の前60日以内にその法人の役員であった者は、その取消しの日から5年間は登録を受けることができません。

 

その2

 いわゆる「駆け込み廃業」があった場合で、廃業等の届出日から5年を経過しない者は登録を受けることができません。

 

「駆け込み廃業」があった場合で、廃業等の届出日から5年を経過しない者

その1の理由による免許取り消し処分に係る聴聞工事があった日以後処分の日又は処分をしないことを決定した日までの間に廃業等の届出をした者でその届出日から五年を経過していない者  

 

廃業等の届出をした者が法人の場合

 免許取消しに係る聴聞公示の前60日以内にその法人の役員であった者は、その取消し日から5年間は登録を受けることができません。

 

欠格事由②(宅建業者の免許の欠格事由と異なるもの)

一定の理由で登録消除処分を受けた者

その1

  • 不正の手段で登録を受けた
  • 不正の手段で取引士証の交付を受けた
  • 事務禁止処分に該当し、情状が特に重い
  • 事務禁止処分に違反した
  • 取引士でないものが取引士としての事務を行ない、情状が特に重い

以上の理由で登録消除処分を受けたもので、登録消除処分の日から5年を経過していないものは登録を受けることができません。

 

その2

 いわゆる駆け込み消除をしたもので、消除された日から5年を経過していないものは登録を受けることができません。

 

事務禁止処分中に自らの申請で登録が消除された者

 事務禁止処分を受け、その禁止期間中に自らの申請により登録が消除されたもので、まだ事務禁止期間(最長1年)を経過していない者は登録を受けることができません。

 

普通の未成年

 宅建業に係る営業に関し、成年者と同一の行為能力を有しない未成年は登録を受けることができません。

 

ポイント

  • 法定代理人が欠格事由に該当しているかどうかは関係なく、登録を受けることができません。

 

登録

資格登録簿の登載事項

 取引士として登録すると、宅建建物取引士資格登録簿(資格登録簿)に一定の事項が記載されます。

 

資格登録簿の主な登載事項

  • 登録番号、登録年月日
  • 氏名
  • 生年月日、性別
  • 住所、本籍
  • 宅建業者に勤務している場合、その宅建業者の商号又は名称、免許証番号
  • 試験合格年月日、合格証番号
  • 指示処分、事務禁止処分があったときは、その年月日、その内容

 

変更の登録

 前記の資格登録棒の登載事項のうち、氏名、住所、本籍、勤務先の宅建業者商号又は名称、免許証番号に変更があった場合は(たとえ事務禁止処分を受けている場合でも)遅延なく変更の登録を申請しなければなりません。

 

登録の効力

 登録は一生有効です。また、登録は試験合格地の都道府県で行わなければなりませんが、どの都道府県で登録しても日本全国で取引士としての業務を行うことができます。

 

登録の移転

 ある県で登録したとしても、ほかの件に登録を移転することができます。これを登録移転といいます。ただし、どんな場合でも登録の移転ができるわけでなく、下記の場合のみ認められます。

 

登録の移転の申請が出来る場合

 登録を受けている者が登録している都道府県知事が管轄している都道府県以外の都道府県に所在する事務所に勤務し又は勤務しようとするとき

 

ポイント

  • 登録移転は義務ではなく、任意
  • 単に自宅の住所が変わっただけでは、登録の移転はできません。

 

登録の移転に関するその他のポイント

  • 登録の移転の申請は、現在登録している都道府県知事を経由して、移転先の都道府県知事に対して行います。
  • 事務禁止期間中は登録の移転はできません。
  • 登録の移転後の新しい取引士証は移転先の都道府県知事から交付されるが、この場合の新しい取引士証の有効期限は、移転前の有効期限を引き継ぎます。
  • 新しい取引士証の交付は古い取引士証と引き換えで行われます。

 

死亡等の届出

 登録を受けている者が死亡したり破産した場合等には、その旨を登録している都道府県知事に届け出なければなりません。死亡等の届出が必要な場合の届出義務者届出期間は以下の通りです。

 

 

届出義務者

届出期限

死亡

相続人

死亡の事実を知った日から30日以内

後見開始

成年後見

その日から30日以内

補佐開始

補佐人

破産

本人

禁錮、懲役等の一定の欠格事由

本人

暴力団員等に該当したとき

本人

 

取引士証

交付申請

 取引士の登録を受けている者は登録している都道府県知事に対し、取引士証の交付を申請することができます。なお、取引士証の交付を受けようとする者は、原則として、登録している都道府県知事が指定する講習(法定講習)で交付の申請前6か月以内に行われるものを受講しなければなりません。ただし、試験に合格した日から1年以内に宅建取引士証の交付を受けようとする者などは例外的に法定講習の受講が免除されます。

 

有効期限、更新

 取引士証の有効期限は5年です。この有効期限を講習するためには法定講習で交付の申請前6か月以内に行われるものを受講しなければなりません。なお、更新後の有効期限も5年です。

 

取引士証の提示

取引士証の提示が必要な場合

  • 取引の関係者から請求があったとき
  • 重要事項の説明をするとき

 

取引士証の記載事項

  • 取引士の氏名、生年月日、住所
  • 登録番号、登録年月日
  • 有効期限の満了する日
  • 交付年月日

 

書換え交付

 取引士は、氏名または住所変更した時は、変更の登録が必要ですが、さらに取引士証の書換え交付を申請しなければなりません。

 

書換え交付の方法

  • 取引士証の書き換え交付は、従来の取引士証と交換で、新しい取引士証が交付される形で行われます。
  • 住所のみを変更した場合には、裏書によることができます。

 

再交付の申請

 取引士証をなくしたり、破損した場合には再交付を申請することができます。なお、取引証をなくし、再交付を受けた後に従来の取引士証を発見した場合には、速やかに発見した方の取引証を交付を受けた都道府県知事に返納しなければなりません。

 

返納と提出

返納

 返納とは交付を受けた都道府県知事に取引士証を返すことをいいます。

 

返納が必要な場合

  • 取引士証が効力を失ったとき
  • 登録が消除されたとき。

 

提出

 取引士が事務禁止処分を受けた時には、交付を受けた都道府県知事に取引士証を提出しなければなりません。

 

取引士証の提出のポイント

  • 取引士証の提出先は交付を受けた都道府県知事
  • 事務禁止期間(最長1年)が満了した場合、提出した者が返還請求を行えば、直ちに取引士証を返してもらえます。

 

おわりに

 宅建建物取引士を目指している方は、早く合格して、取引士証を手に入れましょう。

【5分で納得】宅建業を営むための免許

特に見てほしい方

☑︎宅建士試験を受験したい方

☑︎不動産関係の仕事をしている方

☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 皆さんは不動産に行ったことはありますか?僕は、大学からずっと一人暮らしをしていますので、よくお世話になっています。

 今回は宅建業を営むために必要な「免許」を解説していきます。

 

免許の種類

 宅建業の免許は、都道府県知事免許または国土交通大臣から受けます。どちらかの免許を受けるかは事務所の場所で決まります。

 

一つの都道府県内のみに事務所を設置する場合

→その都道府県知事の免許

 

二つ以上の都道府県内に事務所を設置する場合

国土交通大臣免許

 

ポイント

  • 同じ件でいくつ事務所を設けても、一つの都道府県内のみに事務所があるならば知事免許。
  • 知事免許大臣免許のいずれの免許の場合でも、全国で宅建業を営むことができる。

 

事務所

  • 本店(主たる事務所)
  • 宅建業を行っている(支店従たる事務所)
  • 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、契約を締結する権限を有する使用人が置かれている場所

テント張りの施設などは事務所ではない。

 

ポイント

  • 案内所、モデルルームなどは事務所とはならない。
  • 本店は常に宅建業法上の事務所となる。

例えば、本店では建設業のみ行い、支店で宅建業を営んでいるという場合であっても、その本店は宅建業法上の事務所となる。

 

免許の申請

免許の申請手続き

 宅建業の免許を受けるためには、免許申請書等を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければなりません。

 なお、国土交通大臣に申請する場合には主たる事務所(本店の所在地)の都道府県知事を経由して申請することになります。国土交通大臣に直接申請するわけではありません。

 

免許の有効期限

 免許の有効期限は大臣免許、知事免許のいずれの場合も5年です。

 

免許の更新

更新の申請期限

 免許の有効期限満了後も宅建業を続ける場合には有効期限満了日の90日前から30日前までの間に免許の更新手続きを行わなければなりません。

 

有効期間の延長

 更新の申請期限内に免許更新申請があった場合で、有効期限満了日までに免許権者(大臣又は知事)から更新するかどうかの処分がなされないときは、有効期限満了後も、その処分がされるまでの間は、旧免許は有効となります。

 なお、更新処分がなされたときは、更新後の免許の有効期限(5年)は、旧免許の有効期限満了の日の翌日から起算されます。

 

免許換え

免許換え

 例えば、甲県のみに事務所を設置し、甲県知事の免許を受けていた宅建業者が乙県にも事務所を設置することになった場合には、国土交通大臣の免許を受け直す必要があります このように免許を受け直すことを免許換えといいます。

 

免許換えのパターン

  • 都道府県知事の免許を受けた者が二つ以上の都道府県内で事務所を有することになった場合

従来の免許権者である県知事を経由して、国土交通大臣に申請。

 

  • 都道府県知事の免許を受けた者がその都道府県内の事務所を廃止してほかの一つの都道府県内のみに事務所を有することとなった場合

県知事に直接申請。

 

  • 国土交通大臣の免許を受けた者が、一つの都道府県内のみに事務所を有することとなった場合

県知事に直接申請。

 

免許換えによる免許の有効期間

 免許外によって取得した新しい免許の有効期間は、新しい免許が交付された日から5年です。

 

宅建業者名簿

宅建業者名簿の登録事項

 国土交通省都道府県には宅建業者名簿が備え付けられています。

 

宅建業者名簿の登録事項

  • 免許証番号、免許の年月日
  • 商号又は名称
  • 法人の場合、役員(非常勤役員を含む)、政令で定める使用人の氏名
  • 故人の場合、そのもの、政令で定める使用人の氏名
  • 事務所の名称、所在地
  • 事務所ごとに置かれる専任の取引士(宅建建物取引士)の氏名
  • 宅建業以外の事業を行っているときは、その事業の種類
  • 指示処分や業務停止処分があったときは、その年月日、その内容

 

変更の届出

 上記の宅建業者名簿の登録事項のうち、一部に変更があった場合は、30日以内に免許権者(免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事)に変更の届出をしなければなりません。

 

廃業等の届出

 宅建業者が死亡したり、廃業した場合には、その旨を免許権者に届け出なければなりません。  

 廃業等の届出が必要な場合を届出義務者、届出期限、免許の失効時点は以下の通りです。

 

 

届出義務者

届出期限

免許の失効時点

死亡

(個人)

相続人

死亡の事実を知った日から30日以内

死亡時

合併による消滅

(法人)

消滅した会社の代表者

その日から30日以内

消滅時

破産

(個人・法人)

破産管財人

届出時

解散

(法人)

清算

廃業

(個人・法人)

個人:本人

法人:会社の代表者

 

欠格事由

 免許の申請をしても以下の欠格事由に該当する人は宅建業者としてふさわしくないとして免許を受けることができません。

 

欠格事由1

成年被後見人被保佐人、破産者で復権を得ない者

成年被後見人被保佐人、破産者で復権を得ない者は免許を受けることができません。

 

ポイント

  • 成年被後見人被保佐人はその審判が取り消されれば、直ちに免許を受けることができます。
  • 破産者は復権を得れば直ちに免許を受けることができます。

 

欠格事由2

一定の刑罰に処された者

 禁錮以上の刑、宅建業法違反により罰金の刑、暴力的な犯罪・背任罪により罰金の刑に処された者で、刑の執行が終わった日から5年を経過しない者は免許を受けることができません。

 

ポイント

  • 執行猶予がついた場合、その執行猶予期間中は免許を受けることができないが、執行猶予期間が満了すれば直ちに免許を受けられます。

 

欠格事由3

暴力団員等

暴力団員又は暴力団員でなくなった日から年を経過しない者は免許を受けることができません。

 

欠格事由4

一定の理由で免許取り消し処分を受けた者

 

その1

不正手段により免許を取得した、業務停止処分に該当する行為をして情状が特に重い、業務停止処分に違反した理由で免許取り消し処分を受けたもので、免許取り消しの日から5年を経過しない者は免許を受けることができません。

 

法人の場合

 免許取り消しに係る聴聞公示の日の前60日以内にその法人の役員であった者は.その取消しの日から5年間は免許を受けることができません。

 

その2

 いわゆる、駆け込み廃業があった場合には、廃業等の届出日から5年間は免許を受けることができません。

 

廃業等の届出をした者が法人の場合

 免許取り消しに係る聴聞公示の日の前60日以内にその法人の役員であった者は、その届出日から5年間は免許を受けることができません。

 

欠格事由5

過去に悪いことをした者、悪いことをするのが明らかな者

 免許の申請前5年以内に宅建業に関し不正又は著しく不当な行為をした者、宅建業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者は、免許を受けることができません。

 

欠格事由6

未成年者の法定代理人が欠格事由1〜5に該当する場合

 営業に関し、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が前記1〜5の欠格事由に該当する場合は免許を受けることができません。

 

営業に関し、成年者と同一の行為能力を有する未成年者とは?

  • 婚姻した未成年者
  • 法定代理人から営業の許可を受けた未成年者

 

欠格事由7

・役員等が1〜5の欠格事由に該当する場合

法人

 役員(取締役等)または政令で定める使用人(事務所の代表者)が前記1〜5の欠格事由に該当する場合、その法人は免許を受けることができません。

 

個人

 政令で定める使用人が前記1〜5の欠格事由に該当する場合、免許を受けることができません。

 

欠格事由8

暴力団員等がその事業活動を支配する者

 暴力団員等がその事業活動を支配する者は免許を受けることができません。

 

欠格事由9

取引士の設置要件を欠く者

 事務所について専任の取引士の設置要件を欠くものは免許を受けることができません。

 

おわりに

 宅建業の免許を受けるための条件等を解説しました。不動産屋を営むためにどのようにしたらいいかのみなさんのベースになります。「こんな不動産屋は嫌だな」というイメージでもう一度見ていただければ、欠格事由の種類はわかってくると思います。

【5分で納得】宅建業法の基本

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☑︎不動産に興味がある方

 

 

はじめに

 みさなんは不動産に興味はありますか?僕はあります。ただ、難しい用語ばかりで何を言っているかわかりません。なので、わからないことをわかるようにし、視野を広げるために宅建士の勉強しています。

 宅建は一度合格すると一生有効な資格です。また、建物や土地は企業経営の基盤となりやすいものですので、宅建の資格を取得しているだけで企業からの評価は非常に高くなります。このことから、ぜひ宅建士を目指していきましょう。

 今回は宅建業法の基本的な部分を解説していきます。

 

宅建

 宅建業(宅地建物取引業)とは「宅地・建物」の取引を「業」として行うことをいいます。宅建業を営むためには免許を受けなければなりません。

 

宅地・建物

宅地
  • 現在建物が建っている土地
  • これから建物を建てる目的で取引されている土地
  • 用途地域内の土地(ただし、道路、公園、河川、広場等である土地は除く)

用途地域は簡単に言うと、人がたくさん住む地域

 

建物

屋根と柱(壁)がある工作物

  • 住宅だけでなく、別荘、倉庫なども建物
  • マンションの一室など建物の一部も建物

 

取引

宅建業の対象となる取引

  • 自ら当事者となって売買・交換を行う
  • 他人を代理して売買・交換・貸借を行う
  • 他人の間を媒介して売買・交換・貸借を行う

 

 

売買

交換

貸借

自ら

×

代理

媒介

自分でアパートを建てて自分で貸借する場合は取引に該当しません。

→免許がなくてもできます。

 

取引に該当しない行為

  • 自ら宅地建物を賃借する行為(不動産賃貸業)
  • 建物の建築を請け負う行為(建設業)
  • 宅地の造成を請け負う行為(宅地造成業)
  • ビルの管理行為(不動産管理業)

 

不特定多数の人を相手方として、反復継続して取引を行うこと

  • 自社の社員に限定した宅地の分譲販売は「業」に当てはまらない。
  • 一回限りの販売は「業」に当てはまらない。

 

「業」にあたるかどうか

問題

Aさんが自分の土地を20区画に区画割りして、不特定多数の人に4年間、毎年春と秋に限って販売する行為

 

答え

宅建業に該当する。

「毎年春と秋に限って」と反復継続している。

 

問題

Bさんが自分の土地を20区画に区画割して、宅建業者甲に一括して売却する行為

 

答え

宅建業に該当しない。

「一括して売却」と反復継続している。

 

問題

Cさんが自分の土地を20区画に区画割りして、宅建業者乙に販売代理を依頼する行為

 

答え

宅建業に該当する。

代理の効果はCさんに帰属するため、Cさんが特定多数の人と反復して取引したことになる。

 

免許が不要な団体

「等」とは、独立行政法人都市再生機構地方住宅供給公社など(ただし、農協は含まれない)

  • 信託会社、信託銀行

信託業法で規定があるから(ただし、国土交通省に届け出が必要)

 

無免許営業の禁止、名義貸しの禁止

無免許営業の禁止

 免許を受けずに宅建業を営むことはできません。また、実際に宅建業を営んでなくても、「宅建業を営む旨」の表示や、宅建業を営む目的で広告することも禁止されています。

 

名義貸しの禁止

 宅地建物取引業者が、自分の名義を他人に貸して宅建業を営ませることや、「宅建業を営む旨」を表示させること、宅建業を営む目的で広告を表示させることも禁止されています。

 

おわりに

 そもそも宅建業法とは何かを解説していきました。原則には例外がつきものです。そこの部分も押さえて、学習していきましょう。

【5分で納得】消費生活の保護

特に見てほしい方

☑︎食品関係で仕事をしている方

☑︎健康管理に興味がある方

☑︎食生活アドバイザー検定を受ける方

 

 

はじめに

 皆さんは、とあるURLをクリックして、「◯万円振り込まなければ、このロックを解除できません!」などのワンクリック詐欺に出会ったことはありますか?僕は調べ物をしているときに誤ってクリックした際に、そのようなサイトに飛んでしまったことがあります。ぜひ、お気をつけください。その時は、お金は振り込まないことです。

 現代社会では、さまざまな売り方が発達してきましたが、その中で悪質な売り方の種類も増えてきました。

 今回は、悪質商法の種類や対処法を解説していきます。

 

悪質商法とその対策

代表的な悪質商法の手口

 契約をめぐるトラブルに巻き込まれた場合には、法律などによる対処もできますがどんな手口があるかを知っていくことは予防策として有効です。

 

キャッチセールス

 路上でアンケート調査などと称して近づき、喫茶店や営業所に連れ込んで契約させる。

 

アポイントメントセールス

 「あなたが選ばれました」などと電話やメールで呼び出し契約をさせる。

 

かたり商法

 制服らしきものを着用し、官公署は大手メーカーから来たように勘違いさせて商品を売りつける。

 

ネガティブオプション(送りつけ商法)

 商品を勝手に送り付け、断らなければ、購入を承諾したものとみなして代金を請求してくる。

 

SF商法(催眠商法)

 会場に多くの人を集め、買わないと損をさせるような雰囲気を作り、契約させる。SFは「新製品普及会」の頭文字。

 

内職商法

 内職で収入が得られると言って勧誘し、その仕事に必要な物品などを購入させ、仕事は紹介しない。

 

霊感商法

 先祖の祟りを感じるなどと言って、印鑑や壷などを不当に高い金額で売りつける。

 

マルチ商法

 商品を購入させて買い手が増えるごとに手数料が入ると言って商品の買い手を探させ、次々と人を引き込む。

 

フィッシング詐欺

 金融機関のウェブサイトなどを予想ってカードの暗証番号などを入力させて悪用する。

 

原野商法

 必ず値上がりすると偽って、ほとんど価値のない原野などの土地を不当に高い金額で売りつける。

 

モニター商法

 商品モニターになるとモニター料がもらえると言って商品を購入させ、モニター料を支払わない。

 

電話勧誘商法

 自宅や職場に電話をかけて資格講座などの勧誘を行ない、契約を結ばせる。

 

クリーニング商法

 電話で布団、エアコンフィルターなどのクリーニングを勧められて作業をしてもらうと、高額な作業料を請求されたり、器具を買わされたりする。  

 

悪質商法への対処

契約の不成立

 売買契約は「売りましょう」という申し込みの意思表示と、「買いましょう」という承諾の意思表示とが合致した時に成立します。売買契約が成立すると、売り主には商品を引き渡す義務が生じ、買い主には代金を支払う義務が生じます。

 ネガティブオプションの場合は勝手に商品を送りつける行為が申し込みに当たるとしても、それに対して送りつけられた側が承諾の意思表示をしない限り契約は不成立です。したがって、請求書が送られてきても代金を支払う義務はありません。

 

意思表示の取り消し

 権利を得るのも義務を負うのも個人の自由な意思によるべきです。そのため、民法では、詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができるとしています。取り消すと契約は最初からなかったことになります。

 

契約の解除

 契約が成立しているのにも関わらず、契約当事者の一方が義務を果たさない時(債務不履行)、相手方は契約を解除することができます。

 

消費者を守る法律・制度

特定商取引法

 1976年に制定された「訪問販売等に関する法律」が2000年に「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」に改正された際に、規制対象が拡大されました。この法律は、事業者による違法、悪質な勧誘などを防止し、消費者の利益を守ることを目的としています。

 

特定商取引の対象となる取引

訪問販売

販売業者が通常の店舗以外の場所で行う販売のほか、特定の方法で誘った客を通常の店舗に同行して行う販売も含まれる。

 

信販

新聞、雑誌、インターネットなどで広告している商品を郵便や電話、インターネットなどの方法で購入申し込みを受け付ける取引。

 

電話勧誘取引

電話で勧誘し、申し込みを受け付ける取引。電話がかかってきたあと、消費者が郵便や電話などによって申し込む場合も含まれる。

 

連鎖販売取引

マルチ商法のこと。

 

特定継続的役務提供

長期間、継続的に役務やサービスを提供し、代金を支払わせる取引。

 

業務提供誘引販売取引

内職商法のこと。

 

訪問購入

購入業者が消費者の自宅を訪問し、自宅にある品物を買い取る取引。

 

 悪質商法の場合、販売業者は商品を引き渡すので、債務不履行を理由として契約を解除することは困難です。そこで、特定商取引法などではクーリング・オフという制度を定めています。クーリングオフとは「頭を冷やして考え直す」という意味です。

 

消費者契約法

 Proの事業者が熱心に商品の説明をするので、仕方なく買ってしまったなどという場合には騙されたとも落とされたとも言いにくいため、詐欺や強迫を理由として取り消すことは難しいと言えます。

 そこで消費者契約法が制定され、事業者と消費者が契約を結ぶ際に事業者に以下の行為があった場合には契約の取り消しができることになりました。

 

契約を取り消せる取引の例

  • 契約の重要事項について事実と異なることを告げる。
  • 消費者宅や職場に長時間居座り、なかなか帰らない。
  • 消費者をどこかに誘い出し、帰らせてくれない。

 

クーリングオフ制度

 クーリングオフ制度によって消費者は、理由を問わず、一定期間内であれば契約を解除することができます。払っていた代金は返還されます。商品を受け取っている場合には、販売業者が費用を負担して引き取ります。さらに、工事などが行われた場合には、元の状態に戻すように請求することもできます。

 

クーリング・オフができる期間

訪問販売

キャッチセールス、アポイントメントセールスSF商法(催眠商法)など

8日間

電話勧誘取引

特定継続的役務提供

エステ、語学教室、結婚相手紹介サービス

訪問購入

連鎖販売取引

マルチ商法

20日

業務提供誘引販売取引

内職商法、モニター商法など

 

 クーリングオフは必ず書面で行いますこの書面がクーリングオフ期間中に発送されたことを明らかにするためには内容証明郵便で起こるのが確実です内容証明郵便であれば文章の内容や発送日が公的に証明されるからです。

 解約すれば契約は最初からなかったことになり、支払っていた代金は返還されます。商品を受け取っている場合は、販売業者が費用を負担して引き取ります。さらに、工事などが行われていた場合には、元の状態に戻すよう請求することもできます。

 

不法行為製造物責任法

不法行為と過失責任主義

 不注意で人に怪我をさせたり、他人の品物を壊したりするときは、それによって生じた損害を賠償しなければなりません。このような行為を不法行為といい、加害者に故意(わざと)または過失(不注意)のあることが不法行為の成立要件とされています。

 逆に言うと、過失がない限りは責任を負わなくて済むのです。これを過失責任主義といいます。そして、加害者に過失があったことは、原則として被害者側が証明しなければなりません。

 

製造物責任法(PL法)

 例えば、テレビを見ていたらそのテレビが爆発して大怪我をしたという場合、製造したメーカーに賠償を求めたいけれど、専門的な知識を持たない消費者にとってメーカーの過失を証明することは非常に困難といえます。そこで製造物の欠陥によって人の生命、身体又は財産に被害が生じた場合は、その製造業者が無過失であっても賠償責任を負わせるという法律ができました。それが製造物責任法(PL法)です。PL法によれば、メーカーの過失を証明する必要はなく、爆破したテレビに欠陥が認められれば、損害賠償を請求することができます。

 対象となる製造物とは、製造又は加工されたものをいいます。そのため、加工食品である冷凍食品や缶詰、食用油などが該当しますが、未加工の生鮮食品は含まれません。責任を負う製造業者には、製造者と加工者のほか、輸入業者も含まれます。

 

おわりに

 悪質商法は時代とともにさまざまな形に変化していきました。もし、悪質商法に出会った際は焦らず、クリーニングオフ制度等を利用しましょう。それでも解説しない場合は、友人や家族に相談してください。もし、納得できない部分があるのなら、絶対にお金を言われた通りに払ってはいけません。